夜をわたる月の船 著者:木原音瀬 イラスト:日高ショーコ
蒼竜社ホリーノベルズ BL小説 2009年11月
★★★★
- 夜をわたる月の船 (Holly NOVELS) (ホリーノベルズ)/木原 音瀬
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これは同人誌で第一話を読んだ時に、
鬱々とした作品になるのかなぁと
予想していましたが、やはり…(笑)
死にたがりのオヤジを抱え込んでしまった男の苦悩のお話です。
◆あらすじ
ある日河瀬は上司の柴岡に人事異動をたてにセックスを強要された。どうしても企画部に異動したい河瀬は、たった一度寝るだけで自分の望みが叶うならと、嫌々ながらも男の条件を呑んでしまう。しかし、企画部に異動になったのは河瀬ではなかった。河瀬は自分の体を弄んだ柴岡を憎み、殺意を抱く。
…それから数年後、河瀬は北海道支社長になった男に再会し…。◆
木原節炸裂な作品でございました。
重くて、逃げ場もなくて、追い詰められる一方なのに、
何故か一気に読ませられてしまう木原テクニックに嵌ってしまいました。
ジワジワと締めつけられる様に心が痛くなります。
すごい閉塞間の中で、出口が見つからず
それでもなお追い詰められて・・・。
もしや、WELLやFRAGILEのような結末が
待ち受けてるんじゃないだろうなと
読んでてヒヤヒヤしたりもして…。
結末はネタバレなので書きませんが、
タイトルは結末に関係してます。←意味不明でしょうが、わざとですw
読んでると時々BL作品だというのを忘れてしまいます(笑)
ラブなエロは期待してはいけません。
作中で柴岡はほとんどを『柴岡』ではなく『男』として書かれてるので、
レビュ書くのに名前を思い出せなかった。
それはきっと河瀬視点で表現するからなんでしょうね。
でも、それが河瀬の柴岡への感情を如実に表現してると思えます。
『柴岡』ではなく、『男』でしかないんですよね。
嘘だとわかっていても、それを追求しない方がいい時がある――
真実を知ることは危険と隣り合わせだったりします。
河瀬はそれを知りたがり、知ってしまったために、
そこから抜け出せなくなってしまいます。
捨てることもできるはずなのですが、
自己保身の感情から捨てることも出来ない。
この感情は少なからず誰もが持っているであろう狡さだと思います。
自らを『擬態』だと言っている柴岡の得体の知れなさが不気味です。
その柴岡相手に、河瀬の心情がどう変化していくのかが興味深かった。
終盤になっていくと、柴岡の実体の不透明さの理由が明らかになっていきます。
もうこれはこうなるしかなかっただろうなと、納得しました。
既に読まれた方のレビュをチラチラと読んだのですが,
柴岡にイラついた方が多かったのです。
私もその一人ではありますが、
でも、そうなってしまうのも納得できる人生だったのですよ。
母親の歪んだ愛情が生み出した現実に、彼は自身のアイデンティティを失くしてしまう。
彼は望んではいなかったのにそうするしかなかったのだと。
それがわかってからはイラつきは消え失せました。
それもあって、エンドも含めて読後感は悪くなかったです。
もっともっと語りたいけど、
ネタバレしなくちゃ語れないので
この辺で・・・。
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