日本人の習慣? | 「意識低い系」より「高い系」

「意識低い系」より「高い系」

書籍化のスカウト待ってま~す♡ノンフィクションライターが書いているフィクションって言いたくなる物語

ウーは立ち直る間もなく、海岸に住んでいた頃を思い出した。
どこにも傷が無い鳩の死骸が置いてあるコンビニの前での出来事は、怖かった。
そのコンビニは、店の外に灰皿が置いてある。
社内禁煙が増え、追い出された喫煙者がこのコンビニの前に集まって一服している姿は珍しくなかった。「ライター貸してもらえます?」眼鏡をかけた細長い顔のおじさんは、コンビニがすぐ近くにあるというのに、ウーにライターを貸してくれと言った。細かいこと、気が付かなければ些細な事。でもウーは、「コンビニで買えば?」と言った。するとおじさんの瞳は、真っ黒く白目が無い状態でウーを見て、目の奥は全く光が見えず、まるで残酷な宇宙人のような顔でにらまれた。ゾクゾクッ、鳥肌が全身で暴れた。

傷が無い鳩の死骸と真黒な瞳のおじさんは、のほほんと過ごしていたウーの生活を一転させた。
いつも誰かに見張られているような感覚と、政治犯のような扱いを受けることもたびたびある。

あの売りさばかれていた原稿の最初のアイディアを出版社に提出したのは、この海岸の町だった。動画サービスにまだ、個人バッシングを載せて喜んでいるような低俗な人間がうじゃうじゃいる時代で、いまでこそ、自分おもしろ動画やまじめすぎる動画ばかりになったけれど、当時は個人を精神的に追い詰める動画がたくさん出回っていた。その中に、出版社に提出したはずの企画書を動画にしたものがいくつかあり、いつもいつも、ウーが出した企画をバカにするテレビの企画と同じように、踏みつけられていた。と、同時に、ウーは日本の暗号を読み解いてしまい、それによってブログ内で脅されることも続いていた。それはあっという間だった。読み解いた暗号に書いてあったのは、日本語のブログの読み方。ある日本のブログを読むと、どこを火事にするとか、誰を逮捕するとか、賭博の配当まで書いてあった。

次々と逮捕されるニュースが続いた。

海岸のあれがまだ埼玉県まで続いていたんだ……。
 
そんなある日、越してきたばかりの親子のことが書いてあるいつもの二ちゃんを見ていると、
>じゃあ、あの親子には出て行ってもらいましょう
>火事にしますか
>それがいいでしょう
この情報を読んだ日は何も起こらなかった。けれど、翌日の真昼間に火事は起こった。
原因不明の火事は、親子が部屋にいる間、ウーが真上に寝ている間、起こったのだ。
この町は、遠隔操作で自在に火事も起こせる……。

犬は空を見上げ吠えている。
ウーもつられて空を見上げると、どくろに角が生えたように見える煙がマンションを取り巻いていた。ウーはそれをカメラに収め、東京の友人へ見せた。

「うわ、本当だ。目になっているここ、光ってるように見えない?」
友人と一緒に改めて見る。
どくろの目の中に、星が写ってそれが不気味に光っていた。

「あの町は異常だ、もう嫌だ、助けて」

今日も、ウーの記憶を消し去るという脅しのメールがやって来た。
すでに記憶力が薄れてきて、この小説を書き続けるのが難しくなっているのも感じる。記憶操作もできるよ、自在に火事も起こせるんだからさ

ウーは思い出したようにこっそり教えてもらった不動産屋に電話した。
翌日、会う約束を取り付け、駅に向かった。
なかなか来ない電車。待っている人が、「ウーがまたブログ書いてないんだろ」と言っているのが聞こえた。15分遅れでやってくると、「車内で火事が起こりました。しばらくこの駅で停車します」しばらくってどれくらい?30分以上かかると言う。
ウーは、別のルートで秘密の不動産屋に会うことに決めた。

台湾の地震、最初のニュースで17階建てのビルが倒壊したって言ってたのに、16階に変更になっているのも気が付いている。日本のニュースの信憑性が倒壊している。