その日は特別なこともない、なんてことのない一日として終わりそうだった。しかし、夜、りーちゃんがお風呂に入るのを拒んだことで、事件は起きた。


普段から、お風呂入ろうと言われると、遊び始めたり食べ始めたりするりーちゃん。この日も遊び始めてなかなかお風呂に行こうとしない。そこでダディが強引にりーちゃんの両腕を引っ張り、りーちゃんはしゃがんだ体勢のままフローリングを滑るようにして引きずられる。りーちゃんが密かに好きな「シュルーン」である。ここまではいつも通りだ。


お風呂の前まで連れてこられたりーちゃん。今度は低い声で何か唸っている。よく聞くと「ばぁ〜びぃ〜」と言っている。はいはい、バービーね、とおぎんぎょうを居間から一体連れてくるダディ。ここまでもいつも通りだった。


おぎんぎょうを見たりーちゃんは、これは違うと言わんばかりにまたしても唸り声を出し続ける。普段はどのバービーでも納得するのだが、もう一体要求するのは珍しい。仕方なくダディが別のおぎんぎょうを探しに行くと、居間で使っている、小さなちゃぶ台のようなテーブルの脚に髪の毛を踏まれたバービーがいた。


そのまま引っ張るとバービーの髪が抜けてエライことになりそうだったので、雑にテーブルの脚を持ち上げてバービーを救出しようとしたダディ。すると、テーブルの上に置きっぱなしになっていたコップが逆さまに床に落ちた。中身はりーちゃんがコップに注いだまま何時間も放置されていたグループソーダで、近くにあったおぎんぎょうの服なども紫色に染まっていた。


ただでさえ二体目のおぎんぎょうを取りに行かされて面倒に思っていたダディが、余計な作業が増えたことに切れてしまった。「りーちゃんが飲まないで置きっぱなしににするから、こぼれたでしょ!バービーだって一緒にお風呂に入らないのに、いらないでしょ!さっさとお風呂に入りなさい!」と叱られたりーちゃん。しょんぼりしてそのあとは素直に、マミに言われるがまま、お風呂に入ったのだった。


うーん、まあこれは、半分以上、ダディの八つ当たりですな…。しかし、飲みもしない飲み物をコップに入れたまま放置するのは、やっぱりやめてほしいですなぁ。そして親も、こうして親としての度量を試されているのですなぁ。