世間では、成功体験を真似すると失敗することが多く、失敗体験を参考にすると成功することが多い、などと言われることがある。

 

実際に統計をとった人がいるかは不明だが、感覚としては確かにそんな気がする。人は時に成功体験が忘れられず、同じようにやればうまく行くはず、と考えてしまいがちなのだろう。そんな人間の心の隙を警告している言葉であるようにも思う。

 

3日前のこのブログで、りーちゃんがおよそ10年ぶりに我が家のトイレで成功した話を書いた。これでマミとダディは手ごたえを感じてしまったのだ。よし、イケる。長時間おしっこをしていない時にトイレに座らせれば、今後りーちゃんはできるはずだ、と。

 

この日、りーちゃんの帰宅を出迎えたのはダディだった。デイサービスの先生から、「今日はデイサービスではおしっこは出ていません」と聞かされて、ダディの目がキラーンと光る。チャンスだ、ここでりーちゃんをトイレに座らせよう。今回も成功するはずだ。

 

玄関に入り、いつも通りのルーティンを経て手を洗ったりーちゃん。さあ、居間に入って遊ぼう、とでも思っていたのだろう。トイレに強引に連行しようとするダディに対し、力いっぱいの抵抗を見せた(こんな風に書くとダディはほとんど犯罪者ですな・・・)。それでも成功体験が忘れられない愚かなダディ。抵抗するりーちゃんをさらにパワーで凌駕して、トイレに座らせようとする。もちろん、その試みはうまく行くはずもない。

 

そこでダディはちょっと頭を使うことにした。そうか、りーちゃんを「うぅーん」で手なずけてから座るよう促したらどうだろうか。試しにりーちゃんのあごをさすってみると、「ふがふがー!」と抵抗していたはずのりーちゃんがものの数秒で「うぅーん」と甘ったるい声を出した。その状態をしばらくキープしてから、「じゃ、たっちしよう(立とう)」と誘うも、りーちゃんの態度は180度変わって再度「ふがふがー!」と抵抗が始まる。そんなことを繰り返しているうちに、マミも帰宅した。

 

結局、「うぅーん」と「ふがふがー!」を繰り返しながら最後はトイレに座ってくれたりーちゃん。しかし膀胱はパンパンなはずなのに、1滴も出ないまま数十秒。最後はダディもあきらめて、りーちゃんはオムツをはいて服を着て、居間で遊び始めたのだった。

 

同じタイトルの「その4」と同じく、今回もやっぱりりーちゃんに完敗のダディ。がっくりと肩を落とすその背中には、哀愁が漂っていた。