一般的に、ダウン症児は数字に弱く算数が苦手なのだという。りーちゃんもその例に漏れず、算数はなかなか苦手である。
国語ではひらがな、カタカナの読み書きはほぼできるし、最近は簡単な漢字なら書けるようになった。英語も単語はもちろん、ちょっとしたフレーズならスラスラ言える。しかし算数はというと、一桁の足し算もできないことが多い。
1➕1や2➕2くらいならなんとかなるのだが、3➕2などどなると、指で数を見せてあげないと正解は難しい。それに集中力も続かないようだ。2〜3問正解したあと、「じゃあ、4➕4は?」と聞かれると、適当に「ろく!」などと即答して笑っている。「えぇ〜?」と言われると、これまた適当に「ご!」などと言ってさらに大笑い。一方で、1問目に4➕4を問うと、ちゃんと正解したりもする。
ただ、実生活では数字がわかっていないとりーちゃんなりに困ることもある。いちごなどの果物とかクッキーなどのお菓子とか、おかわりが欲しい時に必ずと言うほど「じゃあ、さんこ!」と要求する。1や2よりも3のほうが多い、ということはわかっているようだ。食べ物のことになるとなかなか貪欲なりーちゃんである。
その延長なのか、最近はなぜか「30てん」を連発している。先日の文化祭でも、事前に買う物を決めるプリントを見ながら、「これ、いくらかな?」と尋ねられると「30てん」と言う。どうやら円と点がごっちゃになっているようだ。
絵が上手に描けていたり、国語のプリントがよくできていたりして、両親から褒められても、りーちゃんは「うん、30てんだね」などと嬉しそうに言い、自賛している。当初はマミもダディも「ええ〜、100点だよ〜」などと言っていたのだが、りーちゃんの30点は最高の評価なのだと、だんだんと理解するようになった。
そもそもりーちゃんは3ですら大きな数字だと思っていたようなので、30はさらにとてつもなく大きな数字なのだろう。マミとダディも以前は、「りーちゃんの30点は、何点満点なのだろうねえ」と議論していたが、最近では「30点満点だね」「いや、10点満点中の30点かもね」などと、相変わらず親バカ全開なのである。
この先も数字についての理解力が大きく向上することはないかもしれない。でもとりあえずは、一桁の世界だけだったのが、二桁の数字を言えるようになって、着実な成長を喜んでおきましょう。