りーちゃんの学校では、入学と同時に「作業」のクラスが始まった。4つあるうちのどれかに割り当てられ、一年間その作業を行うのである。りーちゃんは陶工班の所属になった。
しばらくすると、お皿を学校から持って帰ってきた。これが思いの外、出来が良く色も綺麗で味のある形状で、マミもダディもびっくりした。それぞれのばあばにも差し上げて、我が家でも毎晩のように使っている。
「りーちゃん、すごいねぇ」「素敵なお皿作ったねぇ」などとみんなでベタ褒めなのだが、両親には一抹の不安が。果たしてどこまでが「りーちゃん作」なのだろうか。言い換えれば、かなりの部分を先生が作ってくださったのではないか、という不安だ。
そしてやって来た授業参観。1週間のうちどの授業を見学しても良いということで、我が家は真っ先に「作業」を選んだ。りーちゃんがどの程度、お皿作りに関わっているのか、見てみたいと思ったのだ。
最初は粘土の塊を持ってくることから始まるのだが、その時点で最も出遅れているりーちゃん。そのあとはまず粘土を机に叩きつけてほぐし、さらには棒を使って平たく伸ばす。さらに型に載せて水を塗って、乾燥させる棚に載せて今日の作業は終了である。
りーちゃんは一貫してニコニコと楽しそう。そばにいる先生にもたくさん話しかけいる。だが実際の作業はというと、ほとんど進まない。見かねた先生が粘土を伸ばしてくれたり、かなりの部分をやってくださっていた。やっぱりねぇ…。ちなみに、隣の同じ学年の女の子は、ほとんどの作業を1人で行っていた。普段からしっかりしているお友達だが、さすがである。
他のお子さんとの比較は気にしない我が家だが、最後まで作業は遅れがちで先生のお手伝いが多くて、マミとダディはちょっと複雑な気持ちになったのは正直なところだ。持って帰ってきたお皿もおそらく「りーちゃん作」は3割くらいで、残りは「先生作」だと思われる。
授業の終了時間までまだ余裕があるところで、作業は片付けに向かった。おや、と思っていると、この日の感想を一人一人が話すようだ。りーちゃんも順番がきて、何やら聞こえない声で二言三言。そして首を傾げてニッコリして、周囲の皆さんを笑顔にして感想は終わった。
「男は度胸、女は愛嬌」という言葉は、最近あまり聞かれなくなっているが…。りーちゃんはいろいろなことを、持ち前の愛嬌で乗り切ってしまおうとするフシがある。
そんなに世の中は甘くないのですぞ、と厳しく接するマミとダディ!…んなわけはなく、夜もお家で「頑張ってたね〜」「楽しそうだったね〜」とやはりべた褒め。作業はあまりしてなかったけど、まあ、りーちゃんだからねぇ、と甘々な両親なのである。
こんな親子で大丈夫だろうか?