小さい子なら当たり前なのかもしれないが、りーちゃんは昔から歯磨きが苦手だった。今も自分から進んで磨くことはほとんどなく、1週間に一度くらいだろうか。それ以外はマミかダディが磨いているが、一筋縄ではいかない。本人の機嫌が良ければすんなりと口を開けて受け入れてくれるが、口を真一文字に結んだままなかなか開けてくれないことの方が多い。
りーちゃんがまだ小学校低学年だったころまでは、マミもダディも諦めの良い(?)性格なので、「ま、いっか」と言ってあまり無理やり歯を磨こうとはしなかった。そのせいか、あれは小学校3年の頃だったか、虫歯がたくさんあることが発覚した。りーちゃんはお菓子もジュースも、甘いもの大好きだし、その一方であまり歯を磨かなければ、そりゃ虫歯になるよね、という話だ。マミとダディの怠慢のせいですね…反省。
車で30分くらいの距離にある歯科大学の病院で診てもらうと、かなり進行している虫歯もあることから、全身麻酔で手術をすることになった。そもそもりーちゃんに限らず、知的障害のある子どもは、普通の歯医者さんでは治療はもちろん、診てもらうことも難しいようだ。嫌だと思えば暴れるし、口をなかなか開けないし、仮に治療まで進んでも治療中に動けばとても危険なことになってしまう。りーちゃんも近所の歯医者に行ったことがあるが、本人の拒否も激しく何もできないまま、「じゃあ、今回はこの辺で」と終わってしまった。
その点、この大学病院では、治療中に動けなくするような治療台も揃っているし、麻酔の対応も万全である。全身麻酔をするのも、治療中に動いてしまうと危険なので、そうした危険を排除するためである。親としては全身麻酔も怖いと言えば怖いのだがやむを得ない。ただ、麻酔をする前の診察の段階で、ネットに巻かれて診察台に括りつけられたりーちゃんは、申し訳ないがちょっとおかしかった。手を握ってあげて、大丈夫だよと励ますのだが、本人の真剣さとは裏腹に笑いをこらえるマミとダディであった。
その後もしばらくはこの大学病院に行くと、診察台の上でも嫌がり暴れまくっていたりーちゃん。先生は一生懸命りーちゃんの口を押さえながら診てくださった(いつもありがとうございます)。ダディも毎回、力づくでりーちゃんの足を押さえていた。しかし最近は慣れてきたのか、暴れることはなくなった。
それでもまだ怖いらしく、「ダイジョブだよ、すぐおわるからね、すぐだからね」と自らに言い聞かせながら診察台に横になる。その姿はとっても健気だ。そして最近は終了後に先生に「アリガトございました、バイバイ」と言うようになったのが救いだ。
実はまた虫歯が発覚してしまったので、近々治療をすることになっている。全身麻酔はちょっと怖い。やはり日々の歯磨きを、りーちゃんと共に親も根気よく頑張らなければ。