一般的に、ダウン症児は活舌が良くないことが多いように思う。健常児に比べて舌が長いことが多いそうで、そのために発音がスムースにいかないのだと聞いたことがある。

しかしりーちゃんは、舌がそれほど長くないのか、わりと活舌が良い。ただ、そもそもの知能は現在も幼児レベルで、会話が成り立たないことのほうが多いし、文の形で話すこともあまりない。

活舌が良いとはいえ、勘違いして覚えている単語も少なくなく、エレベーターは「エベレーター」になるし、スパゲティはなぜか「アスパゲティ」と頭に「ア」がつく。おさかなは「オサカナカナ」と長くなる。○○しました、と言いたいときはだいたい、「○○シマシマシタ」とやっぱり長くなっちゃう。

その一方で髪の長いラプンツェルはなぜか「ラプンツェ」と短縮され、アナと雪の女王は「ありの~、ままの~」という主題歌を由縁とするのか「アリノ」と呼ぶ。リトルマーメイドのアリエルも大好きだが、人魚姫を「キンギョヒメ」と言ってしまうのは何度聞いても夫婦で笑ってしまう。

小学校でもりーちゃんの活舌の良さは発揮されているらしく、先生方が特に感心してくださるのは、りーちゃんの英語である。文は話せず単語ばかりだが、やたら発音が良い。一般の人と異なり、文字など書かれたものから音を導き出すことはほとんどできないので、聞いたままをそのまま発音していると思われるが、イントネーションとかアクセントとかはかなり正確で、ネイティブの先生も褒めてくださっているそうだ。

実は家ではこっそりと、ダディが野菜カードや果物カードを使ってりーちゃんに英単語を仕込んだところ、りーちゃんは簡単に覚えてしまった。トマトやキャロット、ピーチなどはもちろんのこと、エッグプラント、キュカンバー、ベルペッパー、ウォーターメロンなど、高校生の兄もスラスラ答えられないような英単語を英語らしい発音で、あっという間に話すようになった。

妹がダウン症だからといって、健常の兄や両親がすべての面で優れているとは限らない。当然のことではあるが、人それぞれのできること、できないことっていろいろだなぁと、改めてりーちゃんから学ぶ日々である。