突然だが、我が娘りーちゃんはあごに触覚を持っているらしい。

夕方、ダディが洗濯物を居間に取り込む。すると、居間で遊んでいた、もしくはテレビを見ていたりーちゃんが、おもむろに洗濯物に近寄り、手を伸ばす。
両手で洗濯物を広げ、自分の顔の前に高々と掲げ、突き出したあごに触るか触らないかのところでこれを上下させる。そう、あごの触覚で繊維の感触か何かを確かめているのだ。あるいは、ちゃんと乾いているかどうかを確認しているのかもしれない。
触覚で繊維に触れるのは時間にして5秒ほどか。確かめてしまえばどうでも良いみたいで、用済みの洗濯物は斜め後方に「ポイッ!」と勢いよく投げ捨てる。この確認作業をほぼすべての洗濯物に対して行う。マミのブラもダディのパンツも、例外ではない。いや、洗ってはあるけど、パンツはなんかイヤじゃない?

一体何を確かめているのだろうか。手よりもあごの方が、よくわかるのだろうか。

娘に尋ねても、明快な返答はない。

ところが、10歳を過ぎたあたりからだろうか、りーちゃんの洗濯物に対する姿勢に変化が現れた。なんと、たたむようになったのである。共働き夫婦を助けようと頻繁に来てくれていたばあばの影響があったらしい。もちろん、必ずあごの触覚で確認作業をしてからなのだが、わりときっちりたたんでくれる。「じゃあ、いっしょにハタもうか?」とダディにお手伝いを促すこともある。あくまでメインで「ハタむ」のはりーちゃんなのだ。最近はさらに、たたんだ洗濯物を引き出しにしまうこともできるようになった。

自閉症の人の中には、興味があることについては集中力を発揮して、細かく地道な作業でも延々と、しかも寸分の狂いもなく続けることができる人もいると聞く。りーちゃんの「ハタむ」はそこまで長時間ではないし、寸分の狂いは全然あるけれども、何となく近いものを感じる。

将来、その集中力で、何かできるお仕事があるといいなぁ。でも、あごの触覚の能力を発揮できるお仕事は、なかなかないかもしれないなぁ。・・・とマミとダディは思っています。