白(藍忘機)から見たふたりの関係は、どんなものだったのだろう

黒(魏無羨)から見たそれとは、かなりちがっていたのではないか

 

(出典:注1)

 

黒(魏無羨)は、崖から落ちて白(藍忘機)から一度姿を消すまでは、

一貫して《ノンケモード》で白(藍忘機)を見ていたのではないかと書いた

 

それに対し、白(藍忘機)から見たふたりの関係は、いくつか際立った特徴があるように思う

 

一つは、山あり谷あり、それも半端ない

 

白(藍忘機)にとって、黒(魏無羨)と付き合い、二人の関係をつくるには、

ジェットコースターのようなプロセスを通らなければならなかったのだと思う

 

最初は、《無礼なやつ》

初めて出会った時の白(藍忘機)がうけた黒(魏無羨)の第一印象は、超悪かった

変な奴は《無視》、《死ね》、状態


すぐに、《できる奴、凄い奴かも》

きっかけは、最初の晩に藍家の屋根のうえで、一戦を交えたときだ

ひそかに自分は剣も仙術もできるほうだと思っていた白(藍忘機)は、

黒(魏無羨)の華麗な技に驚く(・・・オクビにもださないが)

 

とはいえしばらくは、あの無表情のうらで、《無礼なやつ、無視》と、

《できる奴、凄い奴かも》を、行ったり来たりしていたのだろう

 

ほどなく 《気になる、意識する》

黒(魏無羨)が蔵書閣で3日の筆写の罰を受けたとき、白(藍忘機)がつきそう

まだ《あッ、好きかも》という気持ちまでは至っていないとしても

あのあたりから、だんだんと白(藍忘機)は、《気になる》、《意識する》

 

そしてどんどん好きになる。もう止められない

  • ヘッドバンド:寒潭洞で藍氏のご先祖(藍翼)に出会ったとき、白(藍忘機)は、ごく近い人間にしか触れさせないという自分のヘッドバンドを黒(魏無羨)にも触らせている
  • 看病:しばらくして黒(魏無羨)が倒れると、琴を背負って毎日いそいそと看病に向か

しかし、そこから一本調子の上り坂、というわけにもいかなかった

 

白(藍忘機)から見たふたりの関係のターニングポイントは、

黒(魏無羨)が弟(江澄)を助けるため、当時、正しいとされていた剣や仙術をあきらめ、

邪悪とされていた魔道(詭道術法)を修め始めたときだ

 

どんどん好きになったヤツに降りかかる一大事、不安で不安でしょうがない

白(藍忘機)のそれからの行動力に驚く

  • 尋問:黒(魏無羨)にしつこく何が起こったか聞き、ついに魔道(詭道術法)に入ったとゲロさせる
  • 説得:やめたほうがいいと、黒(魏無羨)の説得を何度も試みる
  • 研究活動:何とかしなくてはと、実家(姑蘇の雲深不知処)の図書館(蔵書閣)の立入禁止コーナー(禁室)に入りこみ、何日もかけて黒(魏無羨)を救えるかもしれない方法を探す
  • ガチンコ:やっと可能性を見つけ、それを黒(魏無羨)に知らせると、余計なことをするなという。そこで白(藍忘機)は『お前にとって、オレはなんなんだ!』とガチで啖呵を切り(⇐このセリフ、ズキューンでした、第25話、特別版第9話)、黒(魏無羨)を反省させる

なんて健気な、いい嫁

 

そのあと、黒(魏無羨)が温氏の残党を引き連れて夷陵の乱葬崗へと向かうとき、

白(藍忘機)が最初、身を挺して引き留めようとするが、黒(魏無羨)の決意を知って

それをあきらめる悲しい話はすでに書いたとおり(第27話、特別版第10話)

 

(出典:注1)

 

でも結局、あきらめきれず、黒(魏無羨)を探し、乱葬崗の近くで再会する

飯屋でガキ付きのプチデート。そのとき黒(魏無羨)が、

『お前、オレに会いたかったんだろう』とオレ様なことを言ったら、

白(藍忘機)がはにかんでうつむく(第29話、特別版第11話)

白(藍忘機)、可愛すぎ

 

そのあと悩みに悩んで、

不夜天の戦いの土壇場で世の中を敵に回す黒(魏無羨)の側に立ち、

世間をあっと驚かせる

 

そして黒(魏無羨)とともに戦ったおかげで、むち打ちと幽閉三年の刑を受け、

合計16年も、黒(魏無羨)を失った絶望の淵をさまよう

 

(出典:注1)


ジェットコースターのような、白(藍忘機)の青春時代はほぼすべて、

黒(魏無羨)を知り、恋に落ち、二人の関係を作りたいという切望でできている

 

白(藍忘機)の凄いのは、このような己の人生を、抗わずに甘受する点だ

二人の関係が上がったり下がったりすればするほど

白(藍忘機)の一途さ、健気さは増し、《年上ワンコ攻め》絶賛発動中

見る側からすれば、思い出すだけでニヤニヤしてしまうような

二人の美しい絡み合いの場面が続くことになる

 

二つ目のポイントは、主導権の問題

 

白(藍忘機)は、自分が主導権をとらなくては、二人の関係が広がっていかないと

わかっていたんじゃないか

 

(出典:注1)

 

白(藍忘機)の黒(魏無羨)への入れ込みは、半端ない

 

白(藍忘機)は深窓の美少年、箱入り息子、良家の優等生ぼっちゃん

それがある時突然、本来は自分の人生のレールと交差しないはずの、

自分とは全く違う世界で生きてきたワイルド系イケメンに出会って惚れてしまい

タガが外れたようにのめり込んでいっただけ、という見方もできる

 

黒(魏無羨)の自由奔放な生き方に振り回されていたという見方もある

 

でも、白(藍忘機)が黒(魏無羨)にズブズブと入れ込んでいった理由は、

惚れた弱みや、黒(魏無羨)の奔放さに翻弄されただけではない

自分がここであきらめたら、黒(魏無羨)との関係は深まらない、続かないと

わかっていたからだろう

 

その背景には、前にも書いた、黒(魏無羨)の人生におけるプライオリティと

白(藍忘機)のそれとのギャップがあると思う

黒(魏無羨)は、世に正義を問うという大義名分を掲げて生きていて、

それを白(藍忘機)とともにできればよし、できなくてもよしと、割り切っている

 

しかし白(藍忘機)にとっては、黒(魏無羨)とともに生きるということがまず第一に来る

二人は、ワークライフバランスの考え方が、根本的に違うのだ

それを知った以上、白(藍忘機)は、自分が主導権をとらなくては、

二人の関係が続かないとわかったんじゃないか

 

そして最後のポイントは、白(藍忘機)の迷いのなさ

 

白(藍忘機)は一度も、男である黒(魏無羨)に惚れてしまったことを困惑も、

悩みも、後悔もしていない。それはなぜか

 

たぶんそれが白(藍忘機)にとって、自然のことだったからだろうと思う

つまりかなりの確率で、白(藍忘機)は早い段階から自分がゲイだと自覚していた

 

白(藍忘機)や黒(魏無羨)の生きた時代に、ゲイという概念があったかどうか知らない

しかしこれは人類の歴史と同じほど古い話。あまり難しく考える必要はない

 

黒(魏無羨)も驚いていないが、そうはいっても白(藍忘機)のような一途さはない

その一因は、黒(魏無羨)がゲイへの受容性が高かったとしても

もとはノンケだったからではないか

 

それに対して白(藍忘機)は、黒(魏無羨)への思いが何か、黒(魏無羨)と何をしたいか、

それが友情とはどう違うか、ちゃんとわかっていたに違いない

ちなみにこの解釈、白(藍忘機)のような超絶イケメンが仲間だったらうれしい、という

自分の希望的観測も大いに混じっている

 

このような3つの特徴のおかげで、白(藍忘機)は人生の比較的早い段階で

黒(魏無羨)を生涯の伴侶と決め、どれだけ時間がかかってもあきらめず、

黒(魏無羨)にもそれを認めさせ、二人の関係をつくろうともがき、苦労していったのだろう

 

白(藍忘機)からみる二人とは、自分が作っていきたい関係であり、

自分が作ろうと思い続けなければ実現しない世界である

そして白(藍忘機)にとっては間違いなく、自分の人生の最優先事項だったのだ

そこが、黒(魏無羨)からみる二人の関係とは、根本的に違うと思う

 

そういう白(藍忘機)を愛おしいと思った

それ以上に、黒(魏無羨)に真剣に嫉妬している

 

出典:

注1:Twitter「中国ドラマ『陳情令』公式」

https://twitter.com/TheUntamedJP