池に釣り糸を垂れる老人がいた。
私は声をかけた。
まだ、午前中も早い時間で、私は取材の約束の場所に来たけれど、取材相手がまだいなかったからだ。
その老人とポツリポツリと話した。
空は薄水色で、大きな白い鷺が釣り場のひさしからこちらを見ている。
外来種のブルーギルがかかったら、皆、決まった場所に投げるのだそうだ。
鷺はそのブルーギルを待っている。
波紋の少ない池に音もなく浮かぶ浮きは
水面にその細い体を立てて、ゆらりゆらりと揺れているのか、それともゆれていないのか。
ゆらりゆらり
その曲線は、女の肌のように柔らかく
そのゆらぎは、音もない熱い吐息
空間が歪む
ゆらりゆらり
空と水面を結ぶ〝浮き〟のゆらぎ
つと、魚の跳ねる音に我に帰る。
白い鷺が飛び立った。
私は私である。
私はあなたでもある。