日本から飛行機を乗り継いで約十四時間。イギリス、スコットランドの都市エディンバラ。
葵海が旅立ってから半年。
俺は、ようやくこの地に降り立った。
葵海はここでイギリス文学を学んでいる。
離れていても毎日のようにメールや、たまにスカイプをして、葵海の元気な姿を見ることができた。
明るく、楽観的な彼女は外国の生活にも溶け込んで、寮のルームメイトとも、楽しくやっているらしい。
でもやっぱり、直接会いたい。
そんな気持ちを抱いていた、大学三年の春休み。
「陸、カフェをいつも手伝ってくれてる、バイト代だ……」
俊太郎叔父さんが、イギリス行きのチケットを渡してくれた。
「女ってのは、自分のために一途になってくれる、そういう男に弱いんだ」
叔父さんはそう言って、片目をつむった。
葵海と二人、世界遺産にも選ばれている歴史深い建物が並ぶ旧市街を歩く。
石畳の上、葵海と俺の足音が、心地良く響く。
隣で歩く葵海の姿を自分のだけのものにしたくて、思わずカメラのシャッターを切った。
「もーう。急に何するの!? 陸!」
「いや、なんか……記念にって思ってさ」
「撮るならちゃんと言ってよ」
そう言って、葵海は髪を整えて、俺の方に向かってピースサインをした。
「葵海、頑張ってるな。さっき友達も紹介してくれてあらためて思ったけど、葵海のひたむきさは本当にみんなに愛されてる」
「もーう、さっきからどうしたの? あっ、わかった、私に会えなくてさびしかったんでしょ?」
「今さら、それ言う?」
俺は、故郷の海辺で葵海とやりとりしたセリフをそのまま返した。
「ふふっ、頑張ってるよ、私。相変わらず、すぐに先走っちゃうけどね。ねえ、陸は……見つかった? 陸自身の、夢?」
葵海はふと、俺の方を覗き込んできた。
思ったより葵海との距離が近くて、なんだかドキドキする。
「いや、まだちゃんと決まってない。大学院には、進もうと思ってるけど」
「じゃあ、私と一緒だね。私も日本に帰ったら、もっと勉強を続けたいって思ってるから」
「そっか……直哉も鉄太も、里奈も、それぞれ自分達の道を進もうとしている。俺だけがまだ、旅の途中だ」
「陸って、ズルしないと案外普通なんだね」
葵海はそう言って、楽しそうに笑った。
「なんだよ、それ。悪かったな」
少しふてくされる、俺。
「でも私は、そんな陸の方が、好きかな」
葵海が俺の手をギュッと握ってきた。
愛しい人の小さな手の感触に、俺の胸の鼓動が早くなる。
直哉、鉄太、里奈、みんなそれぞれ頑張ってるもんな。
できれば、また、みんなで……
そうだ……!
半年後の葵海の誕生日!
遠い異国の街並みの中で、可愛らしい恋人の手のぬくもりを感じながら、俺の頭の中に一つの計画がひらめいた。
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次回からクライマックス……の予定。ほんまかいな……たぶん(笑)あと二、三話かなぁ……
思ったより長くなってしまいました。
あっ、イラストは自作でっせー♪
まだまだ勉強中m(_ _)m