久々に晴れました。ぽかぽか。


 昨日、珍しく税理士としてお仕事をしました。


 確定申告相談と申告書の代理作成送信です。


 相談受けてて、株式投資が一般的になってきた昨今、こういった例はよくあるように感じたので、皆さんの参考になればと思い、確定申告の注意点を綴っていこうとおもいます。



 

相談例(なお、具体的金額や必要最低限以上の属性情報は、クライアントの個人情報のため一切表記しません。多少読みづらいかもしれませんがご了承ください。)

 相談者(便宜上1、2と呼称します)の申告する内容は以下の通り


1 給与と株式譲渡と配当収入(複数証券会社、全て特定口座源泉あり)

2 給与と医療費控除とふるさと納税

※収入は1<2で、2の年末調整で1を配偶者控除対象としている。




 まずは、1の方の確定申告書を作成します。(収入が少ない人から所得確定して、もう一方の扶養に入れるのかの判定をするため)


 

チェックポイント1


 上場株式の譲渡所得は特定口座源泉ありの場合、原則として申告の必要はありません。(損失の税還付を特定口座内で受けていると申告が必要な場合があります。)


 しかし、以下のいずれかに該当する場合は、申告に含めると還付金が増えるケースがあります。


1 所得控除が余っている場合

  給与所得の源泉徴収票の、給与所得控除後の金額<所得控除の合計額、である場合です。

2 株式譲渡の損失が過去の確定申告であった、または当年のいずれかの証券会社で譲渡損失があった場合


 ただし、住民税や国民健康保険料が増えてしまう場合や配偶者控除や扶養控除対象から外れてしまい、家計での税金の収支がマイナス(増税)になってしまうケースがありますので、申告前に税理士や税務署、市役所等に確認することをおすすめします。

 本件の場合はケース1に当たり、ただし書き(配偶者控除から外れる)にも該当しました。

1 二名とも国保でなく社保であり保険料が上がらない、

2 本人の還付額>配偶者の(控除額減少による)増税額、であったため申告することにしました。



 

チェックポイント2


 配当所得はざっくり給与収入で500万以下の場合は、総合課税で申告する。


 特定口座の場合、配当は15,315%の所得税、5%の住民税が引かれています。

1 そのまま申告不要にする

2 分離課税(15,315%)で申告する

3 総合課税で申告する、の3通りの選択が可能です。


1はそのままですので損得なく終了です。


2はチェックポイント1の1で書いた通り、所得控除が余っている場合は還付を受けられます。


3は課税所得330万までは税率10%であるため、給与所得控除や所得控除等を考慮すると(ざっくりですが)給与収入500万までの方であれば還付額が2より大きくなります。

 なおREIT以外の日本株の配当の場合、さらに10%配当控除が取れますので、より高所得の方でも総合課税を選ぶメリットが出る場合があります。

 本件は総合課税を選択しました。


 

チェックポイント3


 ここで、私が税務署にいたときに最も多かったクレーム・トラブルを一つ紹介しながら、注意喚起をしておきます。


 株式譲渡・配当の申告する・しない、や分離・総合の課税方法の選択については、一度確定申告書を提出すると取り消し変更ができません。


 よく受けたクレームご相談は、確定申告相談会場で言われたとおり申告したら国保が3倍になった。納得いかないから株式の申告をなかったことにしてほしい、でした。


 残念ながらこれは法律に明記されてますので、出来ません。そう伝えると不親切だ、お役所仕事だと、まああらん限りの罵詈雑言ありがたい苦言を受けました。


 自分の経験を踏まえ、後輩の税務署員のためにも広報しておきたいと思います。

 さて、本題に戻り、申告の続きです。

 本件は外国株の配当があり外国税も特定口座で引かれていたため、外国税額控除を受けることができます。


 

チェックポイント4


 外国税額控除の計算において、絶対に必要なものが前年の確定申告書の控です。

 これがないと、控除限度額や控除余裕額の前年からの繰越額が計算できないので税務署に行こうが税理士に頼もうが、申告書が作れません。


 厳密には、前年の申告で外国税額控除を受けてなければ要らないのですが、普通の人は去年の確定申告でどんな控除を受けていたかを覚えていません。

 そして(株式譲渡損失の繰越もそうですが)一度途切れて申告してしまうと前年以前のものが一切繰越ができなくなります。

 なので、あとになって不利益(税金等で損)を受けないためにも前年の申告書の控は、申告相談の際には必ず持っていきましょう。


続いて、2の方の申告です。


 1の所得が確定したので配偶者控除を変更し、寄付金控除と医療費控除を差し引いても納税の申告になりました。


 e-Tax送信票控とともに、コンビニ納付のQRコードを印刷してお渡ししました。


 R6以降は、納税になるのが面倒ならば(会社の扶養手当とかある方はまた別ですが)配偶者控除外して年末調整しておき、確定申告で還付を受けるのが良いのではとご提案しました。



 

チェックポイント5(最後に)


 マイナンバーカードをマイナポータルに登録してある方は、上記申告はすべてスマホでできます。


 特に2の申告であれば、スマホカメラで源泉徴収票の読み取りもできるので、ネットバンキングをスマホでできるくらいの方ならばできると思います。


 1のケースでもできますが、外国税額控除の入力が細かいのでPCのほうが作成は楽かと思います。


 

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/tokushu/index.htm 


 令和5年の国税庁確定申告コーナーには、こちらからアクセスできます。これから申告される方はぜひチャレンジしてみてください。


 なお、やってみてわからないところあれば、DMやコメントでお尋ねいただければ、画面遷移等のある程度は説明できますかと思います。


ではまた!