ジョシュ・バゼル『死神を葬れ』(新潮文庫)のオビに、ドン・ウィンズロウの推薦コメントがのっていて、おおーっ、懐かしいぞお、と思っていたのだ。
『ストリート・キッズ』からはじまるニール・ケアリー・シリーズの三作目まで、『ボビーZの気怠く優雅な人生』『歓喜の島』までは読んでいた。その後、パッタリ読んでいない。だから、ドン・ウィンズロウの名前を見たときに、まだ現役なのか、と思ったくらいだ。

そうこうしているうちに、なんと新作『犬の力』(角川文庫)が翻訳・刊行された。これがなんとあちこちですこぶる評判がいい。こりゃ、読まないわけにはいかない。
読みました。いやはや、大変な面白さです。
それにしてもドン・ウィンズロウって、こんなに濃く、ハードだったか? モデルチェンジだね、これは。

メキシコの麻薬マフィアとアメリカ人捜査官との抗争アクション巨編。と一言ではそうなるが、およそ30年にもおよぶ抗争で、捜査官は平から出世して責任者になるわ、マフィアの親玉は代替わりするわ、舞台は南米、香港へも拡大するわで、時空のスケールは広大である。
一方で、主役である捜査官アート・ケラーをはじめとする登場人物たちは、その抱えている悩みまで含めてなんとも人間的な魅力に溢れている。そして、その人物造形が素晴らしいからこそ、最後まで飽きさせない。
物語は、山あり谷あり、ド派手なアクションシーン、目を背けたくなる残酷なシーン、えーっ、そうなのーな裏取引も満載、もちろん、犯罪ものに欠かせない美しいヒロインも出ずっぱり。
ハラハラドキドキというわかりやすいシンプルな言葉がとても相応しい、実際、この先どうなるの、と何度かゴクリとさせられた、まさに文句なしの第一級エンターテイメント作品だ。

ご存知の方も多いと思うが、今年の翻訳エンターテイメントのナンバーワン争いはスティーグ・ラーソン『ミレニアム』とのマッチレースともっぱらの評判だ。『犬の力』、読めば納得、それだけ面白い。【Book Japan】での三浦天紗子さん☆☆☆☆☆評価も、それしかあり得ない当然の評価だ。杉江松恋さん、川出正樹さんも絶賛の嵐。

長過ぎたニール・ケアリー・シリーズによって忘れかけられていたドン・ウィンズロウが、少なくとも日本の読者にとっては第一線に復帰した。この点もたまらず嬉しかったのだが、読んでそんな印象を持たれた方は多いのではないかと思う。とにかく、読んでみてください。上・下巻を読み終えたときに、気持ちよくニンマリできることを保証します。 (BJ塚本)

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