今週の土曜日・11月14日から、東京の恵比寿ガーデンシネマで「千年の祈り 」が上映される。
原作はご存知の方も多いであろうイーユン・リー『千年の祈り』、日本では2007年に新潮クレスト・ブックスで刊行されている。近年、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本でも中国人作家が活躍しているが、『千年の祈り』はなかでも白眉の一冊だ。
映画「千年の祈り」は、短篇集『千年の祈り』のなかの表題作を原作としていて、イーユン・リーはこの映画にも脚本として参加している。
アメリカに住む娘のところに北京から父親がやってきて、そこで親と子のこれまで秘めてきた葛藤が描かれる「千年の祈り」。イーユン・リーはアメリカ在住なので、自らの境遇が物語にインスピレーションを与えたのは間違いないが、全10篇が収められている短篇集『千年の祈り』では中国本土を舞台にした短篇もある。そしてどの短篇にも、中国の連綿たる歴史が登場人物たちの背景にいまも息づき、その人間たちを形作っていることが織り込まれていて、たとえば「千年の祈り」は本文わずか20頁の短篇なのだが、その手際の良さと濃さ、そして深さは、まさに驚異的であり、短篇を読む醍醐味の、その極みを味わえる。
「千年の祈り」は肉親の関係に焦点が当てられているが、歴史性ということでいえば「千年の祈り」をはるかに超える歴史の深淵をのぞかせる短篇も収められていて、思わずのけぞってしまうほどだ。いや、これオーバーじゃなく、なにせ中華四千年の歴史ですから。
こんなふうに書くとなんだか中華料理のようにずいぶんこってりしてそうだと思われるかもしれないが、文体はいたって端正です。脂分なし。その坦々とした表現で深淵を感じさせるのだからすごい。今回再読してみて、篠森ゆりこさんの訳が実に見事にフィットしているということにも気付かされた。
ちなみに明日【Book Japan】で掲載する書評も映画関連、12月に公開されるメリル・ストリープ主演の映画の原作本の予定です。 (BJ塚本)
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