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しばらく翻訳が途絶えていたという意味で、掘り出し物。バーナード・マラマッド『喋る馬』は、今年最高の掘り出し物と断言したい、素晴らしい短篇集だ。読むことができて本当に良かったと心から素直に思える作品は、そうはない。『喋る馬』はそんな小説である。翻訳は柴田元幸。ありがとう! マラマッドの作品で現在新品として手に入るのは『喋る馬』だけなので、本当に掘り出し物なのだ。ひとりでも多くの人に読んでほしい。

というわけで、昨日の江南亜美子さんの新刊チェック☆☆☆☆☆に続き、僕もダメを推す。☆☆☆☆☆じゃ生ぬるい、もっと付けたいぞ。

えー、冷静に書きますけどね、全11篇、マラマッドがアメリカに移住したユダヤ人の2世であるということが作品に影を落としていて、きらびやかな装飾とは縁遠い、ほの暗いロウソクの灯りのもとでの、貧乏な弱者の物語です。そして弱者擁護の正義感を振りかざすような作風とは正反対の、叙情にあふれた美しい世界。

解説に、シャガールの絵画との近似性を批評家から指摘されたと紹介されているが、まさしくそのとおりで、なかでも表題作「喋る馬」にその雰囲気が濃厚。「喋る馬」はサーカスの演し物となっている(どうやら本当に)喋る馬とその御者はなんと聾唖の男というシュールな設定。ね、もうこれ、シャガールそのままでしょう。
喋る馬は自分のなかに人間が入っているんじゃないかと疑い、とにかくいまの境遇から逃れたくって仕方がない。聾唖の男はそれを引き留めるべく、身の程を知れ、とモールスで説得する。こんなぶっ飛んだ二人? の関係が坦々と途中ユーモアにあふれたシーンも挟んで進んでいく、その面白さはまさに格別である。今年読んだ短篇のなかで、もっとも美しく残酷な一篇だ。

「喋る馬」の次に収められているのは「最後のモヒカン族」。アメリカからローマにジョットの研究のためにやってきたユダヤ人が、イスラエルからのユダヤ難民につけ狙われるという、犬が自分のシッポを追い掛けて回転するような物語。とある事件が起きて、そのうちに回転が逆になり、結末はなんとも哀しい。

いずれにしても貧しい者たちに優しい眼差しを向けた物語だ。結末において明るい日射しは差してこない。だからこそ、時代を超えて胸を打つのだ。 (BJ塚本)

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