宝島社が開拓した日本のストリートファッションとマーケティング戦略
先日、日本通信販売協会(JADMA)が主催する「TSUHAN2010」というイベントで「宝島社のマーケティング戦略」というセッションがあり、同社広報の桜田さんのお話を聴くことができた。
雑誌不況の中、一番誌戦略なるものを打ち出し、雑誌不況の現況の中、トップレベルの販売部数を堅持している好調の同社の戦略話は非常に興味深かった。
通販協会関係者のお話では同イベントの2日間の全セッションでもっとも早く定員が埋まったセッションらしく、100名の会場はほぼ埋まっていたと思う。通販関連イベントの割に出版社の方が多かったそうだが、それだけ宝島社の露出が高く、みんな興味を持っている証拠だと思う。
お話の中では先だってカンブリア宮殿でも放送された内容もあったが、個人的に印象に残ったことをあっと書いてみる。
その前にせっかくいただいた資料に宝島社の雑誌の発行部数が記載されていたのでメモ代わりに残しておく。
何がどんな雑誌かは実際にはご自身でご確認あれ。
・Sweet 115万部(ブランドもの付録の先がけ)
・mini 36万部(裏原宿の女の子をテーマにしたsmartのガールフレンド版)
・SMART 30万部(CUTiEの男性版として95年に創刊)
・CUTiE 17万部(原宿の女の子を取り上げストリートファッション市場を開拓)
・SPRING 40万部(CUTiEのお姉さん版)
・InRed 70万部(spring卒業生向け、当時の30代誌は主婦orキャリアしかなかったため、新しい30代向け女性誌としてブレイク)
・steady 75万部(おしゃれ通勤着)
・GLOW 30万部(ツヤっと輝く40代女子力。創刊したばかり完売)
・リンネル 30万部(ふわっとやさしいおしゃれマガジン。GLOW同様創刊後すぐに完売)
ついでにメモ。
これまで雑誌は年代とスタイル感でポジショニングを設定することが多かった。20代コンサバとか30代前半カジュアルとか。
sweetは中学生から60代までと幅広い読者がいる。ライフスタイルや嗜好性は年をとっても変わらないことから雑誌はこれまでのデモグラフィックでは通用しなくなってるんだろう。
宝島社といえば私の世代としてはやはり「月刊宝島」。サブカルチャーというかパンク、ニューウェーブ系の雑誌だった印象が強い。いつからファッション誌として有名になってたかはオジサンにはわからない(笑)。
同社がCUTiEを創刊し、日本のストリートファッションを世に発信し始めた頃から宝島社は生まれ変わったのだろう。
そんな同社だが、最近、巷でご活躍中の広報課長・桜田さんが所属する広報部門は2007年創設と意外なほどその歴史は新しい。
桜田さん曰く、出版社はマーケティングを行ってこなかったという(言い方間違ってたらお許しを)。良い本を作っても売れない時代だからこそ、仕掛けが必要だと。
3部作の3作目が発刊される際は1作目、2作目の帯を変更し、3部全部読んだら読者に特典があるような販促を施す手法をとる。
また、電子書籍の波が来たからと言ってそちらに飛びつくのではなく、既存の書店流通を大切にし、読者も流通(書店)も巻き込めるようなことを重要視している。
そんな思いから書店さん向けに印刷工場見学や、各誌編集長と会って話ができるツアーなどを企画し、同じファッション誌を扱うなら宝島社のものをという気持ちにさせることを実践。
とにかく書店で一番良いところに置いてもらって、一番売れる雑誌を作る。それを目指したのが宝島社の言う「一番誌戦略」なんだろう。
そして、宝島社を変えた「マーケティング会議」
メンバーは社長をはじめ、商品開発、書店営業、広告営業、広報、編集など、編集会議とは異なり、商品(雑誌)を売るための会議。これまでの出版社は本を「商品」として捉えていなかったのではないか、と桜田さん。「作品」に近いのかな。出版社は企業であり、そこから生まれる雑誌は商品。だから良いモノを作るだけではダメで、良いモノを作って「売る」ことが大切なこと。
製販、広報、マーケ、編集が集まるこの会議体が成功しているのは、マーケティングが好きな経営者も参加し、課題を共有できていること。そしてヒトモノカネのジャッジが早いことだそうだ。
ときにはくだらないことも話しているそうだが、同社にとって有意義なのは確かだろう。
あと、宝島社と言えば「おまけ」「付録」
宝島社では付録をすべて「ブランドアイテム」と呼ぶ。編集部自らが読者ニーズを徹底的に追及し、素材選びからデザインまで行う。そして、メーカーの工場に検品のため出向くことも多々あるらしく、新人であっても何商品か手がけると、メーカーの製造担当者並みになっているとか。。。
このブランドアイテム、オリジナル性と期間限定が売れる理由だ。
そして最後に桜田さんがまとめた宝島社マーケティングのポイントはこれ。
1:雑誌のライバルは「雑誌」ではない。
雑誌のライバルは雑誌ではない。女性がお金と時間を消費するものすべてが競合となる。今、雑誌を読んでない「潜在読者」たちをどう取り込んでいくか。だからこそいろんなところでCMを打つ。ときにそれはアンパンマンだったり、プロ野球中継だったりと。
2:既成概念にとらわれない。雑誌は商品、業界の常識を疑う。
出版社は企業、そこから生まれる雑誌は商品。決してアート作品ではない。
3:社内でわかりやすい目標を持つ「一番誌」となる。
社員の多くは中途採用。いろんなビジネスセンスの人が集まっている。女性6割。情報化と効率化重視。コミュニケーション重視型経営。それが宝島社の強み。
グループごとに共通認識できない指標を掲げてもわかりづらいだけなので、わかりやすく共有できる目標を掲げる「一番誌戦略」
なるほど。
経営にわかりやすさは絶対必要だ。
ビジョンが明確なのもモチベーションアップにつながるし。
電子書籍の波が出版社に対して押し寄せてくる中、彼らは電子書籍に興味なしと言い切った。
自分たちは一番読んでもらえる雑誌を作り、書店流通を応援し、売り場と共に幸せになるのだという明確な考えがそこにある。
とは言え、電子書籍化の波に抗えないこともまた事実。
彼らの次に投入する企画から目が離せない気がした。
私が本件に関して11月12日につぶやいたのはコチラです。
雑誌不況の中、一番誌戦略なるものを打ち出し、雑誌不況の現況の中、トップレベルの販売部数を堅持している好調の同社の戦略話は非常に興味深かった。
通販協会関係者のお話では同イベントの2日間の全セッションでもっとも早く定員が埋まったセッションらしく、100名の会場はほぼ埋まっていたと思う。通販関連イベントの割に出版社の方が多かったそうだが、それだけ宝島社の露出が高く、みんな興味を持っている証拠だと思う。
お話の中では先だってカンブリア宮殿でも放送された内容もあったが、個人的に印象に残ったことをあっと書いてみる。
その前にせっかくいただいた資料に宝島社の雑誌の発行部数が記載されていたのでメモ代わりに残しておく。
何がどんな雑誌かは実際にはご自身でご確認あれ。
・Sweet 115万部(ブランドもの付録の先がけ)
・mini 36万部(裏原宿の女の子をテーマにしたsmartのガールフレンド版)
・SMART 30万部(CUTiEの男性版として95年に創刊)
・CUTiE 17万部(原宿の女の子を取り上げストリートファッション市場を開拓)
・SPRING 40万部(CUTiEのお姉さん版)
・InRed 70万部(spring卒業生向け、当時の30代誌は主婦orキャリアしかなかったため、新しい30代向け女性誌としてブレイク)
・steady 75万部(おしゃれ通勤着)
・GLOW 30万部(ツヤっと輝く40代女子力。創刊したばかり完売)
・リンネル 30万部(ふわっとやさしいおしゃれマガジン。GLOW同様創刊後すぐに完売)
ついでにメモ。
これまで雑誌は年代とスタイル感でポジショニングを設定することが多かった。20代コンサバとか30代前半カジュアルとか。
sweetは中学生から60代までと幅広い読者がいる。ライフスタイルや嗜好性は年をとっても変わらないことから雑誌はこれまでのデモグラフィックでは通用しなくなってるんだろう。
宝島社といえば私の世代としてはやはり「月刊宝島」。サブカルチャーというかパンク、ニューウェーブ系の雑誌だった印象が強い。いつからファッション誌として有名になってたかはオジサンにはわからない(笑)。
同社がCUTiEを創刊し、日本のストリートファッションを世に発信し始めた頃から宝島社は生まれ変わったのだろう。
そんな同社だが、最近、巷でご活躍中の広報課長・桜田さんが所属する広報部門は2007年創設と意外なほどその歴史は新しい。
桜田さん曰く、出版社はマーケティングを行ってこなかったという(言い方間違ってたらお許しを)。良い本を作っても売れない時代だからこそ、仕掛けが必要だと。
3部作の3作目が発刊される際は1作目、2作目の帯を変更し、3部全部読んだら読者に特典があるような販促を施す手法をとる。
また、電子書籍の波が来たからと言ってそちらに飛びつくのではなく、既存の書店流通を大切にし、読者も流通(書店)も巻き込めるようなことを重要視している。
そんな思いから書店さん向けに印刷工場見学や、各誌編集長と会って話ができるツアーなどを企画し、同じファッション誌を扱うなら宝島社のものをという気持ちにさせることを実践。
とにかく書店で一番良いところに置いてもらって、一番売れる雑誌を作る。それを目指したのが宝島社の言う「一番誌戦略」なんだろう。
そして、宝島社を変えた「マーケティング会議」
メンバーは社長をはじめ、商品開発、書店営業、広告営業、広報、編集など、編集会議とは異なり、商品(雑誌)を売るための会議。これまでの出版社は本を「商品」として捉えていなかったのではないか、と桜田さん。「作品」に近いのかな。出版社は企業であり、そこから生まれる雑誌は商品。だから良いモノを作るだけではダメで、良いモノを作って「売る」ことが大切なこと。
製販、広報、マーケ、編集が集まるこの会議体が成功しているのは、マーケティングが好きな経営者も参加し、課題を共有できていること。そしてヒトモノカネのジャッジが早いことだそうだ。
ときにはくだらないことも話しているそうだが、同社にとって有意義なのは確かだろう。
あと、宝島社と言えば「おまけ」「付録」
宝島社では付録をすべて「ブランドアイテム」と呼ぶ。編集部自らが読者ニーズを徹底的に追及し、素材選びからデザインまで行う。そして、メーカーの工場に検品のため出向くことも多々あるらしく、新人であっても何商品か手がけると、メーカーの製造担当者並みになっているとか。。。
このブランドアイテム、オリジナル性と期間限定が売れる理由だ。
そして最後に桜田さんがまとめた宝島社マーケティングのポイントはこれ。
1:雑誌のライバルは「雑誌」ではない。
雑誌のライバルは雑誌ではない。女性がお金と時間を消費するものすべてが競合となる。今、雑誌を読んでない「潜在読者」たちをどう取り込んでいくか。だからこそいろんなところでCMを打つ。ときにそれはアンパンマンだったり、プロ野球中継だったりと。
2:既成概念にとらわれない。雑誌は商品、業界の常識を疑う。
出版社は企業、そこから生まれる雑誌は商品。決してアート作品ではない。
3:社内でわかりやすい目標を持つ「一番誌」となる。
社員の多くは中途採用。いろんなビジネスセンスの人が集まっている。女性6割。情報化と効率化重視。コミュニケーション重視型経営。それが宝島社の強み。
グループごとに共通認識できない指標を掲げてもわかりづらいだけなので、わかりやすく共有できる目標を掲げる「一番誌戦略」
なるほど。
経営にわかりやすさは絶対必要だ。
ビジョンが明確なのもモチベーションアップにつながるし。
電子書籍の波が出版社に対して押し寄せてくる中、彼らは電子書籍に興味なしと言い切った。
自分たちは一番読んでもらえる雑誌を作り、書店流通を応援し、売り場と共に幸せになるのだという明確な考えがそこにある。
とは言え、電子書籍化の波に抗えないこともまた事実。
彼らの次に投入する企画から目が離せない気がした。
私が本件に関して11月12日につぶやいたのはコチラです。