狸です。

ポイント制退職金制度を導入するに際して、標準報酬月額を利用する場合に、各年ごとの評価乗率の問題があります。

シンプルな手法は各年ごとの評価乗率を、100分の100 つまり、 1 に設定するのが良いのですが、ポイント制退職金制度は明らかに既往の労働に対する報酬部分ですので、この部分を手厚くすると退職金支払い債務の内、確定額の部分が高騰します。結果として退職金総額を押し上げる事になります。

しかし、もっと大きな問題は、退職金に対する会社の査定が届かなくなるという部分です。従来の基本給勤続年数連動型の退職金制度では、懲罰的な減額以外は殆ど会社の査定は行われてきませんでした。この結果として、従業員さんとしては、勤続年数さえ永ければ退職金の金額が自動的に大きくなると言う安心があり、会社としても、事前に退職金額を推測でき、退職金原資の手配が容易であったという長所がありました。

反面、退職金額が硬直的になり、労働の質を退職金額に反映することが難しいという問題点がありました。

ポイント制退職金制度の導入に際して、退職金全体に於ける既往の労働部分の割合を低下させ、労働の質に対する報奨部分を増加させることが出来ます。また、懲戒規定を発動するときに報奨部分を加算しないと言う手法により、既述の退職金減額に対する裁判で会社に不利な判決がでたり、会社に不利な条件で和解することを避けることが出来ます。

しかし、退職金総額が変わらない状態で、既往の労働部分のみを下げることは、明らかに不利益変更になります。取扱いにはくれぐれも注意してください。

つづく