アルミトラが言った。-----お話しください、あなたの一度目の結婚を。
アルムスターファ氏が答えて言った。
私が21歳の時、父が急逝した。その当時タイには大学は少なく、しかし私は多くの富裕層子弟が取る選択肢と同じく、チュラロンコン大学へ進学し会計学科に在籍していた。
父が急逝し私の肩は突然一族の稼業を背負うことになった。
その苦労は別の機会に話そう。
ある日、母がある同年輩のタイ人女性を家に招いた。その女性は私よりも少し年下らしい娘を連れて来ていた。食事の席が設けられ、私は日頃の疲れもある中で丁重に振る舞った。その席の中で、その娘の名前は略語でPPPNと言いその親子はタイ国内の綿織物業者中でも屈指の大手のオーナー一族PCTPN一族直系だとわかった。
その娘の母親は私をじろじろと眺め「健康そうで、チュラロンコンで勉強しながらこんなに若くしてすでに鉱山の事業を継いで。なんて強運な息子さんだこと」と言った。強運?俺は強運なのか?そうか、俺は強運なのか。そこに意識が集中している間に母とその娘の母親は続けて話していた。
「PCTPN一族も、お宅様の様な素晴らしいご一族とご縁が出来て本当に光栄ですわ。」「いえいえ、こちらこそ、お宅様の御嬢さんの様な素直で可愛いらしいお嬢様と末永くお付き合いさせて戴けて本当にありがたいことですわ」「是非とも今後ともよろしくお願いしますね。」「そうですね、まずは御嬢さんが大学を出られて、、、」
私はそこでふと正気に返った。母親たちは私の結婚を決めていた。母親たちは私、そしてこの娘に、私たちがどう思っているかは聞かなかった。私はまだ、その娘と話しさえしていないのに。
こうして、私とその娘はいつの間にか結婚することになった。