ひらめき電球コラムニストの尾藤克之です。

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『3時間で身につくClaude活用術』 (WAVE出版)

 


 

「何度も読み返した本はありますか」と聞かれると、少し答えに詰まる。仕事として読む本に限れば、答えは「1冊もない」だからだ。

 

私はコラムニストとして、年に数百冊の書籍紹介記事を書いている。中心はビジネス書だ。どれほど名の知れた著者の本でも、2度読むことはない。読むのは、はじめに、あとがき、第1章だけ。これで本の50%は押さえられるから余計なものは読まない。

 

乱暴に聞こえるかもしれないが、理由がある。ビジネス書は、もっとも良質なコンテンツを冒頭に置く。第1章の出来栄えが、その本のすべてといってよい。第1章が素晴らしければ第2章にも目を通すが、そうした本は1割にも満たない。さらに、全ページに目を通すのは数%だろう。

 

つまり私のビジネス書の読み方は、いかにして読まずに捨てていくかに主眼がある。情報は1度受け取れば用が済む。2度目に読んでも、同じものしか出てこない。

 

小説は違う。同じ本を何度も読む。2度目、3度目のほうが、むしろ新しい。

 

最近のお気に入りは藤岡陽子だ。『晴れたらいいね』の作者である。看護師でもある作家で、命の描き方に独特の手触りがある。そして暗い。暗いのだが、読み終えると妙な明るさが残る。この不思議な文体は、デビュー作『いつまでも白い羽根』にすでに如実に表れている。

 

読み返すのは、筋を確かめるためではない。暗さの中から明るさが立ち上がる、その瞬間にもう1度立ち会いたいからだ。結末を知っていても、その瞬間は色あせない。情報なら1度で済むが、体験は何度でも繰り返せる。

 

もう1人、たまに読み返す作家がいる。中学生の頃に出会った眉村卓だ。代表作といえば『ねらわれた学園』だが、私が好きなのは『ねじれた町』である。『ねらわれた学園』や『なぞの転校生』は何度も映像化されたのに、『ねじれた町』は1度も映像化されていない。いつか映像になればいいと思い続けて、すでに数十年がたった。

 

考えてみれば、映像がないからこそ、あの町は私の頭の中にしか存在しない。映像化を待ちながら、私は数十年、読み返すたびに自分だけの映像を再生し続けてきたのかもしれない。

 

ビジネス書は捨てるために読み、小説は戻るために読む。何度も読み返す本とは、中身が変わらないのに、読むたびに何かを返してくれる本のことである。最近、そのように考えている。

 


 

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