馬車道物語 -10ページ目

<馬車道の不思議少年・翔:第3話>5

3人が店を出て馬車道を歩いている時に
不思議な出来事が起こった。
洋子がハンカチを忘れたとさっきの店に戻り、
再び二人に合流するまでのわずかな間のことだった。

進と真理は街路樹の下で何やら騒いでいる親子が目に入った。
子供が風船のひもを手放してしまい、

街路樹の枝にひっかかって止まっていた。
大人がジャンプした程度では届かないと思われる高さだった。
子供は親にその風船を取ってくれとせがんでいた。

二人がその様子を見つめていた時、
いつの間にか67才の少年が真理の目の前に現れ、
「あの下で僕をほうり上げてくれない?」と、ささやいた。
「それは無理よ。」と答える真理に、
「多分、大丈夫だから。」と言って、片目をつぶった。

真理はやむなくその少年と風船の下に行き、
彼を後ろから抱きかかえて思い切りほうり上げた。
すると真理の加えた力以上に、明らかに50㎝くらいは高く飛び、
見事に風船のひもをつかまえて真理の腕の中に下りてきた。

(記 原田修二)

■次回は 3/16 <馬車道の不思議少年・翔:第3話>6