この文は人によって不快になる箇所があるかもしれませんので、またネタバレを含んでおりますので、自己防衛なさりたい方は読まないで下さい。更にあえて文体をカタくしております。









私は3月19日、エレファントカシマシの有明アリーナのコンサートに行けて、本当に良かったと思う。
それは現在のエレファントカシマシを確認できたから。そして今まで彼等に身勝手で過剰な要求をして来たのを改めよう、と反省できたから。とは言えこれからも、曲の感想や売り方について感じた事は率直に述べたい。勘違いファンが偉そうに勝手に言っとけと思って下さって結構。

だがしかし大げさな表現だが、これは我が心を振り返る旅だった。短い歴ながらストイックにライブだけ観て帰るという縛りに何か意味があるのか?と問われれば自己満足ですからと答える。



MUSICAに書いてあった事、62ページあたり。(以下大意)

〈ファンは色んなプロデューサーが関わったエレファントカシマシを、これこそがエレファントカシマシだと思っている。それは間違いじゃない。でも今回極力、プロデューサーの関わりを削ぎ落として4人でこしらった。それが出来たのが嬉しかった。だからファンの求めていたのとは違うかもしれないけど、4人でやった。そこに意味がある。〉


なるほど私はそうだったんだ。「プロデュースされたエレファントカシマシ」に惹かれていたのだな。あの4人の音は、音楽的波動を超えた力に満ちていると分かっていたつもりなのだが。
しかしまだシングル2曲なのだ。Dead or Aliveの様な熱いロックのミニアルバムを期待する私は要求過多なのだろうか。


私の観た有明アリーナでは、序盤で数曲続けてヴォーカルの入りが遅れ伴奏とズレたままになり、宮本ももたついたのが分かって、焦った感じで何とか曲の途中で演奏と噛み合った。それが何曲かあった。タメが多かった。それで入りが遅れる。ワザとずらしたのでは無いのは分かった。イヤモニの調子か?それとも⋯
(私の苦手な歌謡曲の大御所がやりがちな遅れとズレはご勘弁)
どうかWOWOWの収録がある21日にはそういう事がありませんように、と願った。果たしてどうだったのか。

3人の演奏はブランクがあったのに素晴らしくパワフルになっていた。トミはまさにバンドの兄貴だった。演奏とヴォーカルをリードしていた。やっぱり4人で出来る喜びが力になってるのだ。コンサートの中後半はすごく安心して聴けた。

聴きたかったリッスントゥザミュージックと翳りゆく部屋は⋯美しかった。ストリングスの金原フォー(宮本命名)!このパフォーマンスを国宝にしてくれ。
フェイク、スキャットがCDとは違った。間を端折っていた。これがライブだ。見事に青春の切なさを中年達が再現していた。いや待て観察だ。双眼鏡が無かったが、おそらく3曲目くらいで若返り始めていたと思う。

何の曲か忘れたが、バックスクリーンのCG演出はかっこいいつもりでやってるのだろうが、私には不要に感じた。目が疲れるだけだった。後ろから8列目、双眼鏡忘れ、花道も逆光で見えないオバサンには演出なしのスクリーンで全部拡大してくれるだけでいいのに。新曲のYes.I.doの時は加工無し四分割で写してくれた。

天井から伸びた巨大なゾウさんの鼻のようなダクトらしきものが、いい感じにスクリーンの同じ場所を隠してくれた。エレファントカシマシだからゾウさんの鼻⋯ちげーよ。


ここでYes.I.doについて言わせて欲しい。私はソロアルバム・縦横無尽もミニカバーアルバム秋の日にも、曲によってヴォーカルの処理がお好みでは無いのだ。デモ音源にこだわるあまり、雑味を残し過ぎている。試しに音量を絞って聴いてみて欲しい。摩擦音が耳障りなのだ。サシスセソ(シャシシュシェショ)、タチツテト(チャチチュチェチォ)、カキクケコ(破裂音強し)、気になるブレス音⋯。
あんなに好きだったロックヴォーカリストの歌を耳障りとか思う日が来るなんて⋯
私はそう聴こえてしまう自分の耳を恨んだ。なんでこうなんだ。

ところがライブになるとその事象は消え去り、すんなり聴こえるのだ。なんでこうなんだ再び。音源もそうしてくれよ!
ちなみにラジオの音声になると耳から入って脳を溶かすヴォイスに昇華する。意図せずヴォイスを使い分けているのか。

カップリング曲It’s only lonely crazy daysは今まで使わなかったhoneyという単語も入れてあり色気がある。ソウル・フラワー・ユニオン奥野真哉さんの鍵盤がリズムにからまりますます色っぽい。己の人生と世の中をちょっと突っぱねた目線で歌うロケンロー。sweet sweet sweetと切なく繰り返す箇所が特にいい。こっちを演ってくれるのはいつになるのか。奥野さんはキーボードとプログラミングもしてくれた。感謝を込めてソウル・フラワー・ユニオンのアルバム・ハビタブルゾーンを聴いた。


この頃のコンサートでは、以前よりテンポを遅くしてると宮本もインタビューで言っていた。
なのでRAINBOWとかガストロンジャーはイメージを壊さない様に頑張るが、これからの曲はスローやミディアムテンポ中心になって行くんだなと確信した。お年なんだからそれでいいんだ。肩の力が抜けてるので伸びやかだった。生放送のテレビでやる時の「緊張がパフォーマンスに出ちゃうベテラン」とは別人だった。




〈追記〉
ここで薄れて行く記憶を書きとどめたい。
四階席はひとつおきだった。
私はここ絶対誰も来ませんから荷物置きませんか?と隣の彼女に声をかけた。
彼女の右隣も空いていたのでお互いそうさせて頂いた。
今宵限りの隣人は空席を見渡し少々嘆いていた。そしてかなり天空席である事も。
私は、いや、いい席だと思いますよ。左右を気にしなくていいし。と言い全体を見渡してからもう一度、うん、いい席ですと言った。

宮本の息づかいやアスリート並のアクションが分かる席だけが神席なのか。桜吹雪を浴びる席こそが良席なのか。彼女の思い分からないでもないが、まだこれから幾つも参加する予定だと。私は地方民なので今回限りだと言ったが、きっと何故もっと参加しないのか、そのせいでツアーが完売していないのではないかと思われたかもしれない。すまないな今宵限りの隣人よ、私はゴネた末にやっと一日だけねじ込んだファンとは呼べないファンなんだよ。下手すれば目を閉じて音だけをとらえようとする、ヴォーカルのビジュアルに余りときめかなくなってしまったファンなんだよ。
・・・でもね、だから聴こえるものもあるんだよ。


きっとソロからのファンの集団行動なのだろう。一部が終わると急かせるように手拍子が鳴った。私はこの手拍子要らないわ!ここで手拍子要らない!手拍子するな!と声に出した。そんな事で声を荒げる奴はかえって迷惑か。でも言わずにいられなかった。私はエレファントカシマシ(とファン)には美学を貫いてもらいたいのだよ。(今書いて泣いている)

アリーナツアーで宮本は、☆の曲で観客の歌を待つ仕草をしているとかしてないとか。美学など幻想か。頭コチコチのファンの遠吠えか。あなたはどう思う?(宮本著・明日に向かって歩け!風に)




先頭にも書いたが、過剰な期待をしないでおこうと思えたので楽になった。これは落胆では無い。妥協でも無い。(出来れば)そのままを受け止めよう、と思えたのだ。そう思えた、思えたのだ。


ところで何故か私は、激しい系ロックが結構好きなので、これからもそういうジャンルの方は違うミュージシャンに求めて行こう。色んなアーティストのライブに行く様になったきっかけを作ってくれた恩人よありがとう。良い旅をありがとう。












金原フォー









エレファントフォー









ギタリスト剃る前