さっぽろ地下街に


たからやというお土産屋があった


審美堂の隣だった


今もあるのか調べてない


専門学校時代


土日のみのバイトだった


長期休みには連日働いた


ある日気づいたら


同じ時間に来るおじさんがいた


三越の地下食品売場で買った


さつまいもの天ぷらを一個食べる


たからやで売ってる


瓶の町村(まちむら)牛乳で流し込む


おじさんは必ず先輩が対応


先輩は何も言わず瓶の蓋を開けて渡す


町村牛乳は濃くて美味い


おじさんは口のふちを白くしながら


ごくごく本当に美味そうに飲む


さつまいもの天ぷらをむしゃむしゃ食べる


おじさんが天ぷらを食べ終わるのを


先輩は見ないようにしている


特に雑談もしていない


私は店の奥に引っ込んで


地下街を歩く人の流れを見るついでに


おじさんを見るとはなしに見る


そしておじさんの人生を思う


きちんとさつまいもの天ぷら一切れと


瓶牛乳一本をバランス良く片付ける


余計な話も一切しないおじさん


きっと労働の後なのかな


飲み終わった瓶を置いていくおじさん


天ぷらの包み紙は置いて行かなかったおじさん


「ありがとうございました」


先輩は後ろ姿に声をかける。


私がロックミュージシャンなら


おじさんに捧げる歌を作っていただろう。













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