八月の雨は蝉の羽音に似て、オアンオアンと耳鳴りがする。



智朗(トモロウ)は公営住宅の階段を昇りながら、ここは何せ最上階だから確認は無用だとぼんやり考えていた。栄養ドリンクで風邪薬を飲んだら効くらしいな・・・。家に有ったかな・・・。




最上階に達したので、階の表示も見ずにポストに新聞を入れた。

降りる時少し寒気がした。熱が出て来たか。あれ・・・?待てよ最上階って確か三階だよな。今、何回踊り場を回ったっけ。三階なら踊り場の数は二箇所の筈だ。もう二回以上回った。確かだ。なのにもうひとつ有る。・・・もうひとつ有る。




智朗はうあああ、と声を出した。いつもは早朝なので気を使うのだが、そして間違えたら直ぐ確認するのだが、今は振り返ってはいけない気がしてたまらない。

全てを終えフラフラと帰り着いた後、すっかり熱を出して寝込んだ。











(※後に入れ間違いの苦情は無く、智朗は安心したが、無理言って担当区域を変えて貰った。)