調子に乗って、またショート・ショートを書きました。長文は書けない体質なので、このくらいが丁度いいかもしれません。なんなりとコメントを頂けると、このところの落ち込みから這い上がれます。
「智朗の朝」
智朗は、公営住宅の階段を上りながら、何かが激しく当たるバタンバタンという音を聞いた。早起きの住人が玄関先で出している音かと思ったが、三階の踊り場にある窓ガラスに、何度も体当たりしている雀だと分かった。またかよ、と即、窓を全開にしてやった。
憐れな生き物は、折角開けてあげたにもかかわらず、天井の隅に逃げてしまった。ポストに入れる前に、新聞を持った手を伸ばして、そっちへ行け!と払ってやったが、どうしてこうなのだ、中々開いた窓の側に行かない。仕方なく新聞はポストに入れ、出ていけよ、と願いを込めながら階段を降りた。
良く、窓際のハエなども開けてやった側とは反対の、行き止まりの方に逃げてしまい、いつまでもジジジジやっている。憐れよのう。
でも待てよ、俺もあいつ等と同じかもな。親切な誰かが、窓を開けてくれた事に気付かずに、ジジジジ、ジジジジ・・。端から見て、愚かで不器用で素直さがない。折角親切にしてくれた周りからも、愛想を尽かされるような、魅力のない存在だ。親が願いを込めて付けたであろう、智朗(トモロウ)という名前が皮肉な程に。
人間の足音が遠ざかる間に、雀は自由の身になったらしい。
公営住宅の新聞を配り終えて、自転車に戻った時、タイヤのそばに何か光る物が目に入った。
智朗は、おい、雀の恩返しかよ、と小さな声でツッコミを入れて、ニヤニヤしながら、のぼったばかりの朝日にその百円玉を透かしてみた。

「人間も大変なんだな~。」
「智朗の朝」
智朗は、公営住宅の階段を上りながら、何かが激しく当たるバタンバタンという音を聞いた。早起きの住人が玄関先で出している音かと思ったが、三階の踊り場にある窓ガラスに、何度も体当たりしている雀だと分かった。またかよ、と即、窓を全開にしてやった。
憐れな生き物は、折角開けてあげたにもかかわらず、天井の隅に逃げてしまった。ポストに入れる前に、新聞を持った手を伸ばして、そっちへ行け!と払ってやったが、どうしてこうなのだ、中々開いた窓の側に行かない。仕方なく新聞はポストに入れ、出ていけよ、と願いを込めながら階段を降りた。
良く、窓際のハエなども開けてやった側とは反対の、行き止まりの方に逃げてしまい、いつまでもジジジジやっている。憐れよのう。
でも待てよ、俺もあいつ等と同じかもな。親切な誰かが、窓を開けてくれた事に気付かずに、ジジジジ、ジジジジ・・。端から見て、愚かで不器用で素直さがない。折角親切にしてくれた周りからも、愛想を尽かされるような、魅力のない存在だ。親が願いを込めて付けたであろう、智朗(トモロウ)という名前が皮肉な程に。
人間の足音が遠ざかる間に、雀は自由の身になったらしい。
公営住宅の新聞を配り終えて、自転車に戻った時、タイヤのそばに何か光る物が目に入った。
智朗は、おい、雀の恩返しかよ、と小さな声でツッコミを入れて、ニヤニヤしながら、のぼったばかりの朝日にその百円玉を透かしてみた。

「人間も大変なんだな~。」