母の日に寄せて、ショート・ショートを書きました。お笑いではありません。











 

裕理子は、立ち仕事でパンパンになったふくらはぎを、「片方の膝で圧迫したら、気持ちいい。」と言う情報を母から聞いてから、毎日帰宅したら直ぐ行う。金も暇も要らない割には、効く。明日、久美ちゃんにも教えてあげよう。


部屋の片付けや、流しにある洗い物は、どうしても後回しにしてしまう。「疲れているんだから。」という真っ当な理由を振りかざして。いつの間にか長座布団の上でうたた寝したあげく、喉の渇きを感じ、ハッとして起きる。多分5分か10分の間だろうが、夢の中でも田宮先輩に愚痴を聞かされた。


ペットボトルのお茶を冷蔵庫から出して、半分くらい一気に飲んだ。少しむせた。隣室の住人にかなり気を使いながら、部屋の中を簡単に片付けながら、投げ飛ばしてあるランドセルを開け、クリアケースに入った印刷物を確認する。






「えっ・・?」



裕理子が目を落としていた印刷物は、いつの間にか涙で余り読めなくなっていた。


「かっくん・・、私・・、そんなに笑ってないのに・・。」


ティッシュの箱からごっそり紙を取り、涙と鼻を拭いた。

そうっとふすまを開け、裕理子を泣かした詩人の寝顔を見た。


(かっくん、君には私がいつも笑って写っているんだね・・。ありがとう。それなら笑おう。君に見える通りの母になろう。)


裕理子は何度も何度も、その短い詩を読み返した。何度も何度も涙で読めなくなりながら。












「おかあさん」



おかあさんは、

いつもおそくかえってくる。

おかあさんは、

いつもわらっている。

おかあさん、

ありがとう。