コント「乗り突っ込み」







(電話が鳴る。プルル、プルル、プルル、カチャ!電話に出る年配婦人。ゆったりした口調。)



「はい、もしもし、はいそうです。」


「はい、ええ、義郎は主人の名前ですが。」


「あ、そうなんですが主人は今、ちょっと遠くへ出掛けております。」


「まあ、そうですか・・。そう申されましても・・だいぶ遠いもので。」


「ええ、すみません。いつ戻るか分かりませんですの。」


「はい、私でもよろしいと。そうですか。・・え?そうなんですか?」




「まあ、主人たらいつの間に・・。本当ですか、知りませんでした。」


「え?それはそれは!まあ、どうしましょう。」


「ああ、やはりそうですか。それで、おいくらですか?」


「まあ!そんなに・・?そんなにするものなんですか?」




「あら、それは失礼しました。実物を見ていませんもので。」


「それにしてもおかしいですね?主人はいつ、それを購入したのですか?」


「え?そんな馬鹿な!・・そんな事はあり得ませんわ!」


「あら、だって、どうやっても無理だと思いますわ!」


「オホホホホ!天国からでも注文したのかしら!」


「あら、失礼!ええ、そうなんですよ、もうとっくに主人は亡くなっておりますから!だからさっき言いましたでしょ。遠くへ出掛けておりますって!」


「だからそんな、二百万円もする絵なんて、買うわけがないんですよ!オホホホホ!・・あら、どうしましたか?もしもし!もしもし!」







(受話器を置く年配婦人。ガラッと変わった口調。)


「フッ・・もう切れてる。(苦笑する)詰まんないの!もう少し乗ってやれば良かった。よし、今度はそうしようっと!」







(※ご近所の70代のご婦人の体験を元にしました。)