エセエッセイ「健さんの本を読んで」


俳優・高倉健さんが、世界各地で出逢った心暖まるエピソードを綴った「南極のペンギン」を読みました。


子供さんでも読めるようにルビ(フリガナ)が付いています。
10編のいいお話が納められています。お人柄がしのばれる文章です。

そのうちの「ふるさとのおかあさん」は、お母様の想い出を綴っております。きっと、泣きながら書いたのだろうな、と勝手に想像します。

俳優として肉体を鍛え上げていらした健さんも、少年期は体が弱かったそうです。お母様は、大人になってからも健さんの体をずっと、ずっと心配なさっていました。映画のストーリーよりも、「健さんが危険な目にあっていないか」、ばかり見ていらした。危険を感じると、もうそんな辛い仕事はやめて、こっちに帰って来なさい、と長い手紙をくれたそうです。

 
ある時、健さんは、足にアカギレができている時、ポスター撮影があり、ごまかす為肌色の絆創膏を貼りました。スタッフの誰もアカギレの事は知りません。

お母様はポスターを見ただけで、「アカギレが、足にできちょるね。もう寒いところで、撮影はしなさんな。会社の人に、頼んでみたらどうね」という手紙をくれました。健さんは、母のあたたかい手を思いだし、ふるさとに帰ります。でも顔をあわせると口ゲンカをしてしまいます・・

健さんは、スターになり、誰もお母様のような口調で話しかけてくれる人が居なくなった事を、寂しく思いました。



映画の撮影中のため、お母様が亡くなって、一週間も遅れて駆け付けます。健さんは骨箱を開け、母と別れたくなくなって、骨をかじってしまいます。妹さんたちは、健さんの頭がおかしくなったと思い、悲鳴をあげて止めます。
でも健さんは、理屈ではなく、「おかあさんと別れたくない」と強く思ったのでした。



健さんは、こう綴る。

『人生には深いよろこびがある。
骨になってもなお、別れたくないと思えるほど愛する人に出会えるよろこびだ。

人生には深い悲しみもある。
そんな愛する人とも、いつかかならず別れなければならないことだ。

でもおかあさんはぼくの中で、生きつづけている。』




・・ありがとう、健さん。