エセエッセイ「ノスタルジー」

エセエッセイ「ノスタルジー」

　
　ハイテクなおもちゃを自慢したがるスネ夫くんは、足るを知ると言う事がない。飽きやすく、親は常に欲する以上の物を与え続ける。与える事が親のステイタスでもある。　そしてそんな環境が、彼に優越感のみで自己存在価値を認識させる。渇望は彼を成長させるどころか、残虐な策略を持ってしてまで優位に立とうとする。
　スネ夫くんは、小箱に入れた綺麗な石を眺めた事がない。
　
　
　半調理もしくは調理済みの情報はバラエティーに富んで、多少濃い目の味付けに慣れてしまう。コンビニや深夜営業のレストランでリーズナブルに味わえる。話題の店、珍しい店には曜日を問わず行列が出来る。行列に並ぶ行為は一種の脳内調味料で、実際以上の評価を与える。さらに街は、SNSで写真付き感想を発表するにわかグルメリポーター、グルメライターで溢れかえっている。
　にわかグルメライターは、おばあちゃんの優しい味付けの煮物を、食べた事がない。
　

　噛み砕かれ、読みやすくまとめられた情報の類いは、あらゆる知的好奇心をググるだけで満たしてしまう。ネットサーファー達は、部屋から一歩も踏み出さずに世界中を旅した気分になる。紙の媒体の手触りを知る事なく、あなたにおすすめの類似情報を提示してくれる。図書館でイメージの海を浮遊する心地よさより、お試し読みでタイムロスを避けたがる。従って偏った世界へのめり込むのをよしとする。批判は匿名で、変換ミスの駄文をやり取りする。
　ネット民は、母が絵本を読む声を聞いた事がない。