仕事で使いやすいブラウザを選ぶなら、表示速度だけでなく、複数のWebページを整理し、必要な情報へすぐに戻れるかどうかが重要になる。メール、クラウド資料、社内システム、調査ページを行き来する業務では、タブの切り替えだけでも小さな負担が積み重なる。Vivaldiは、タブスタック、ワークスペース、画面分割、Webパネルなどを備え、作業内容に合わせて閲覧環境を調整できるブラウザだ。すべての機能を使いこなす必要はなく、普段の業務で不便を感じる部分から設定を変えられる。本記事では、実際の仕事で役立つ機能と設定手順、導入前に確認したい注意点を解説する。
1. 仕事用ブラウザに求められるのは、タブを増やさず情報を扱う工夫
現在のオフィスワークでは、ブラウザが事実上の作業環境になっている。Google WorkspaceやMicrosoft 365などのクラウドサービス、社内ポータル、プロジェクト管理ツール、オンライン会議まで、一日の業務をWebブラウザ上で完結させる人も少なくない。
Microsoftが2025年に公表したWork Trend Indexでは、Microsoft 365の利用データを分析した結果、業務時間中に会議、メール、チャットなどの通知が平均約2分間隔で発生していたと報告している。この数値は特定の利用者集団に基づくもので、すべての職場に当てはまるわけではない。それでも、作業の中断が日常的に起きていることを示す資料として参考になる。
仕事で使いやすいブラウザとは、単に多くのページを開けるものではない。作業を中断しても、必要な資料や直前の状態に戻りやすいブラウザと考える方が実用的だ。
例えば、営業担当者が顧客情報、提案資料、見積書、メールをそれぞれ別のタブで開いている場合、目的のページを探す時間が発生する。資料作成中に別案件の問い合わせが入れば、作業内容が混ざりやすくなる。
こうした場面では、仕事用ブラウザのタブ整理機能が役立つ。
VivaldiはChromiumを基盤としながら、タブ表示や操作方法に独自の設定項目を備えている。Chrome向け拡張機能も利用できるため、既存のWebサービスや拡張機能を活用しながら閲覧環境を変更できる。
ただし、拡張機能の互換性や社内システムの動作が完全に保証されるわけではない。会社が指定するブラウザやセキュリティ方針がある場合は、それらを優先する必要がある。
2. タブスタックとワークスペースで案件ごとの情報を整理する
仕事中に多数のタブを開く人にとって、最初に確認したいのがタブスタックだ。
タブスタックとは、関連する複数のタブを一つのグループにまとめる機能を指す。例えば、同じ顧客に関する契約資料、企業情報、提案書をまとめれば、別の案件のページと区別しやすくなる。
タブスタックの作成方法
デスクトップ版では、まとめたいタブを別のタブの上へドラッグすることでグループを作成できる。複数のタブを選択して、右クリックメニューからスタックを作成する方法もある。
作成後は名前や色を設定でき、二段表示を使えば、グループ内のタブを確認しながら切り替えられる。
仕事でVivaldiのタブ管理を活用するなら、「顧客A」「市場調査」「月次報告」など、作業内容が分かる名前にしておくとよい。
一方、ワークスペースは複数の作業領域を切り替える仕組みだ。タブスタックが関連するページをまとめる機能であるのに対し、ワークスペースは業務全体を目的別に分けるために使う。
ワークスペースの設定方法
タブバーにあるワークスペースメニューから「新しいワークスペース」を作成し、名前を設定する。
例えば「通常業務」「顧客対応」「情報収集」の三つを用意すれば、それぞれに必要なタブだけを表示できる。右クリックメニューからタブを別のワークスペースへ移動することも可能だ。
Vivaldiのワークスペース機能は、同じブラウザ内で複数の仕事を並行して進める場合に便利だ。ただし、ワークスペースはアカウントやCookieを完全に分離するための仕組みではない。異なるログイン環境を厳密に分ける必要がある場合は、ブラウザのユーザープロファイルを使い分ける方が適切である。
また、ワークスペースを増やしすぎると管理そのものが複雑になる。最初は二つか三つに分け、必要になった段階で追加する程度が使いやすい。
3. 画面分割とWebパネルで資料の比較や確認をしやすくする
資料を見ながら文章を書く、複数の製品仕様を比較する、管理画面の数値を確認しながら報告書を作成する。こうした業務では、ページを何度も切り替える動作が負担になる。
Vivaldiの画面分割機能は、複数のWebページを一つのウィンドウ内に並べて表示できる仕組みだ。
画面分割の操作手順
比較したいタブをCtrlキー、macOSではCommandキーを押しながら選択し、右クリックメニューから「Tile(タブを並べて表示)」に相当する項目を選ぶ。
ステータスバーのページ分割ボタンから、縦方向、横方向、グリッド表示などのレイアウトを変更することもできる。
例えば、左側に競合製品の仕様表、右側に自社製品の説明資料を配置すれば、内容を見比べながら確認できる。翻訳業務なら原文と翻訳文を並べ、記述の違いを確認する用途にも向いている。
ただし、画面を細かく分割すると一つひとつのページが狭くなる。13インチ程度のノートパソコンでは、二画面表示を基本にした方が読みやすい場合が多い。
もう一つ役立つのがWebパネルだ。
Webパネルは、よく使うWebサイトをブラウザの側面に表示する機能で、メインのページを閉じずに別のサービスへアクセスできる。
設定するときは、サイドパネルを開いてWebパネルの追加ボタンを選び、登録したいページのURLを入力する。現在表示しているページを右クリックし、Webパネルへ追加する方法もある。
辞書、社内Wiki、タスク管理サービスなどを登録しておくと、資料を読みながら関連情報を確認しやすくなる。
ただし、すべてのWebサービスが狭いパネル表示に対応しているわけではない。ログイン認証やファイル操作が正常に動作しない場合は、通常のタブで開く必要がある。
画面分割もWebパネルも、それ自体が作業時間の短縮を保証するものではない。頻繁に比較する情報を近くに配置することで、確認作業の負担を減らすための機能と考えたい。
4. ショートカット、タブ休止、内蔵機能を仕事に合わせて設定する
毎日繰り返す操作には、キーボードショートカットが役立つ。
ショートカットとは、特定のキーの組み合わせでブラウザの操作を実行する仕組みだ。タブの切り替え、ページの再読み込み、パネルの表示などを、メニューを開かずに行える。
Vivaldiでは「設定」から「キーボード」を開き、操作ごとのショートカットを確認・変更できる。
特に便利なのがクイックコマンドだ。WindowsやLinuxではF2、macOSではCommand+Eで呼び出せる。コマンド名やページ名を入力し、タブの検索やブラウザの操作を行えるため、メニューの位置を覚える必要が少ない。
ただし、既存のショートカットと競合する設定を追加すると、操作が分かりにくくなる。初めからすべてを変更せず、利用頻度の高い操作だけを調整することを勧めたい。
タブ休止機能でメモリ使用量を抑える
長時間の業務では、多数のタブを開いたままにすることもある。ページによってはバックグラウンドで処理が続き、メモリを使用する。
タブ休止は、利用していないタブの動作を一時的に停止し、メモリ使用量を減らすための機能だ。
タブまたはタブスタックを右クリックし、休止に相当する項目を選ぶことで利用できる。休止したページは、再び開いた際に読み込み直されることがある。
注意したいのは、入力途中のフォームや進行中のWebアプリケーションだ。保存していない内容があるページを休止させると、作業状態を失う可能性があるため、事前に保存しておく必要がある。
メール、カレンダー、メモを一つの環境で扱う
デスクトップ版にはメールクライアント、カレンダー、フィードリーダー、メモなども用意されている。
複数のメールアカウントを管理したり、予定を確認したり、調査中に見つけた情報をメモに残したりする用途では、別のソフトウェアを開く回数を減らせる可能性がある。
ただし、会社で利用するメールサービスによっては、管理者の許可や追加の認証設定が必要になる。
すでに業務用のメール・予定管理環境が整っている場合は、無理に置き換える必要はない。内蔵機能をすべて使うことよりも、既存の仕事の流れを崩さないことが大切だ。
5. ビジネスで使う前に確認したい安全性と運用上の注意点
仕事用ブラウザを選ぶ際には、使いやすさだけでなく、業務データの取り扱いも重要になる。
特に顧客情報、契約書、社内資料を扱う場合は、ブラウザのプライバシー設定と企業のセキュリティ方針を区別して考える必要がある。
Vivaldiには広告やトラッカーをブロックする機能があるが、これによって業務情報の漏えいを完全に防げるわけではない。端末の管理、アカウント認証、アクセス権限なども適切に設定する必要がある。
複数の端末で作業する場合は、ブックマークやパスワードなどの同期機能も利用できる。同期データはエンドツーエンド暗号化されるが、業務用アカウントや社内情報を個人の同期環境へ保存してよいかどうかは、所属組織の規定を確認したい。
また、仕事と私生活のブラウジングを分けたい場合には、ユーザープロファイルの利用が考えられる。ワークスペースとは異なり、プロファイルはブックマーク、履歴、Cookieなどを別々に管理するために使える。
一方、企業によっては、ブラウザのバージョン管理、拡張機能の配布、監査ログなどに関する要件がある。これらが重要な環境では、個人の使いやすさだけを理由にブラウザを変更することは適切ではない。
導入を検討するなら、まず普段使っている業務用Webサイトが正常に動くか確認し、次にタブ整理と画面分割を試す程度から始めるとよい。
仕事の効率化は、多くの機能を使うことではなく、必要な情報へ自然に戻れる環境を整えることから始まる。
複数の資料を並行して扱うことが多い人は、Vivaldiのタブ管理やワークスペースの設定方法を確認し、現在の業務環境と比較してみる価値がある。反対に、社内システムとの互換性や組織の管理方針が優先される場合は、無理に移行する必要はない。
自分がどの操作に時間を費やし、どこで作業を中断されやすいのか。その小さな不便を把握することが、長く使える仕事用ブラウザを選ぶための確かな基準になる。