あんたが好き。

そう思えば、想うほど心が生温く感じて。

何のため、誰のためって考えてしまってたよ。

あんたに出会うまでは。

遺伝子の嘘、まやかし。

今でも信じられないよ。

何で俺が先生のことを考えてしまうのか。

この世には兄さんとそれ以外、それしかなかった。

なのに。

突然現れてさ。

こっちがいい顔してりゃ、勝手にズカズカ俺の中入ってきて。

ムカつくんだよ。

なんで俺の中にいるんだよ。

どうして俺が追い出そうとしても、出てってくんないんだよ。

一番わかんないのは

今まで兄さんがいればいいって思ってた俺が、

兄さん以外の、あんたのことを考えてるってこと。

俺は、兄さんが悲しまないように、一緒に生まれてきたのに。

なんで兄さん以外のことで、幸せなんて感じてしまってんだよ…!

いつまでも、俺の一番は兄さんだ。

そうじゃなきゃ、今までの方丈那智という人間がなくなってしまう。

俺が飽きない居場所は、兄さんの弟っていう場所だけなんだ。

俺さ。

素直になんかなれないんだよ。

素直になんてなったら、全部壊れちまうんだよ。

そんな俺が万が一、あんたに想いを伝える日が来たら。

責任…取れよ。

俺が兄さん以外に1番の居場所を与えるなんて、

あんた以外にないんだからさ。