私は今。






真剣なお嬢様と対峙しております。






「セバスチャン。」

「はい。」






「ヴァレンタイン、何が欲しいですか。」

「…は?」






そんな日から数日経った今日はまさしくヴァレンタイン。なんだか外が騒がしい気がするのは…

「んっもう!セバスちゃ~ん、チョコあ・げ・る・わ☆あ、でもウィルにもあげなきゃ。どっちが本命なんて…決められないわっ!!」

気のせい、ですね。






さて。いつものおやつでも作りますかね。今日は何がよろしい…






ガチャ。

「あっ!」






そこにいたのは、私がこれからデザートを作ろうとしている相手、お嬢様でした。

「…何をしているんです。」

「…えへへ☆」

「誤魔化さない!!」






あからさまに落ち込むお嬢様を見て今日がヴァレンタインデーだということを思い出す。

「えっと、これはね。」

「お嬢様は怖いもの知らずですね。」

「え?」

「お嬢様の執事たるもの、どのショコラティエよりもおいしいチョコスイーツを作れなくてどうします!







「というわけで。」






「生半可なもので、私が満足するとは思えませんよ?」

「…!!」






おや。これはorzというやつでしょうか。

「はぁ~…セバスチャンは甘いものが苦手そうだから、かなりビターなチョコスイーツを作ろうと思ってたのに、うまくいかなかったの…。それだけでも落ち込んでたのに。」

「お嬢様は私に任せておけばいいのですよ。」






顔にチョコホイップやパウダーが付いたお嬢様がため息を吐いた。






「お嬢様。」

「…え?」






お嬢様の唇に触れる。一瞬体を強ばらせたお嬢様だが、ギュッと強く目を閉じた。






「ふっ。」

「え?」






しばしの沈黙。みるみる頬が赤くなるお嬢様。実におもしろい。






「セバスチャン、今何した?」

「チョコホイップを拭っただけですよ?何か期待してましたか?」

「な…!?」






「もう、セバスチャンたら私をからかって!!私ばっかりドキドキして…!」






体を叩かれながら腰を屈め、顔をお嬢様の目線に合わせ。






指を舐める。






「…ちょっ!!それ、私に付いてたやつ!!」






「やはり。」






「私には甘過ぎ、ですね。」