「ソロモンの偽証」、以前ちらっと観たことはありましたが余り集中して観ることができず、今回ゆっくり観たところです。
良かったです。
宮部みゆきさんの本は、「火車」「理由」「模倣犯」くらいしか読んでいませんが、「火車」でカード地獄、「理由」で偽装家族といった現実味のある衝撃的なテーマを取り上げた宮部さんですが、「ソロモンの偽証」は表面的にはイジメが主題のようですが、どちらかと言えば青春ロマンというか恩田陸さんの描く世界観に近いものを感じさせます。
もちろん恩田さんとは大きく違って、生々しい現実の問題を観る人に訴えかけます。
映画に戻ります。
映画は藤野家のクリスマスイブの朝の様子から始まります。いきなり主役の藤野涼子さんの登場ですが、清潔感のある風貌に自然に魅了させられる魅力があります。ウサギの世話のためクラスメイトと早めに学校に着いた二人は、一人のクラスメイトの死体を発見してしまうところから話が進んでいきます。
映画は前編(事件)と後半(裁判)の連作になっていて、後半でこの死亡事件の学校内裁判の様子が描かれます。事故なのか事件なのか、または自殺なのかを巡って話は予想外の結末へと進んで行きます。
この映画に感銘を受けたのは、殺伐とした内容にも関わらず、どこか甘酸っぱい青春の香を感じさせてくれた点です。主人公を演じた藤野涼子さんの演技もそうですが、演技を感じさせない自然体の演出が良かったんだと思います(検事役はちょっと個性が強すぎたかも)。
エンディング。裁判を終えた主人公達が学校の正門を出て別れていきますが、何の興奮もない、その自然な雰囲気がこの映画と結末としてとても合っていると思いました。
観終わった時「いい映画だった」と素直に言えるのは久しぶりの感じでした。
追伸)松重豊さんが結構目立つ先生役をしてましたが、今となってな何を観ても井之頭五郎にしか見えないなあ。