スカッとする曲を聴いてみたい。
こんな時は何を聴いたらいいのか。
クラシックは元々最後盛り上がってスカッとするように出来ている曲が大半なので悩ましい限りです。
そこで今回は、スカッとすると考えて最初に思い付いた、ベルリオーズの幻想交響曲をお薦めします。
ベルリオーズは異常な精神の持ち主だったらしく、ある女性に恋して婚約までしたとき、その母親から別の男性と結婚すると告げられ、女性と母親を殺害しようと女装して女性の家に向かう途中で、ふと我に帰り中止したということがあったようです。
この幻想交響曲について、ベルリオーズはプログラムを書いています。
「病的な感受性と激しい想像力に富んだ若い音楽家が、恋の悩みによる絶望の発作からアヘンによる服毒自殺を図る。麻酔薬の量は、死に至らしめるには足りず、彼は重苦しい眠りの中で一連の奇怪な幻想を見、その中で感覚、感情、記憶が、彼の病んだ脳の中に観念となって、そして音楽的な映像となって現われる。愛する人その人が、一つの旋律となって、そしてあたかも固定観念のように現われ、そこかしこに見出され、聞こえてくる。」
作曲家はアヘンの夢の中で恋人を殺し自らも絞首刑になり、最後は魔女の饗宴(サバト)を描きます。
しかしこんな曲が、国は違えどベートヴェンが第九を書いた数年後に書かれているとは驚きです。
さて、演奏は誰のにしますか。
この曲はそんな風な楽想を持っているので、交響曲と名付けられているものの管弦楽曲の要素も大きく、カラヤン始め多くの録音は管弦楽風に演奏して効果を上げていますが、ここではアバドとシカゴ交響楽団の録音をお薦めします。
アバドの指揮はどちらかというと交響曲としての側面というか、曲の細部を精緻に表現しようとします。特に第三楽章「野の風景」では二人の羊飼いがイングリッシュホルンと舞台裏のオーボエで表され、片方が呼びかけると片方が遠くから答えるということを繰り返しますが、最後の呼びかけにオーボエはもう答えてくれません。ここは作曲家が女性に対する恋心と嫉妬心を表す所ですが、この辺りの繊細な表現は素晴らしい。
アバドは最後「魔女の夜宴の夢」ではとうとう手綱を緩め、全米一の凄腕楽団であるシカゴ交響楽団の能力を全開に発揮させます。
あー、スカッとした。
この章終わり。