クラシックのピアノ曲を聴いてみたい。

 

こんな時は何を選べばいいか。

 

ベートーヴェンの「悲愴」?「月光」?、いや違います。

 

迷わず、ショパンの12の練習曲を聴いてみて下さい。ただし、同じ題名で二つあるので注意が必要です。作品10と作品25。10とか25は作品番号で殆どのクラシック曲には作品番号が付けられていて作曲順が分かりやすくなっています。作品10の方を聴いて下さい。決して作品25の方が劣るという訳ではないですが、その演奏の衝撃が大きいのは作品10の方です。そして気に入ったら作品25の方も。

 

そしてピアニストも迷わずマウリツィオ・ポリーニ一択です。

 

1960年のショパンコンクールでぶっちぎりの一位を獲得したものの、その後10年公の場から引いて研鑽を積んだ後、1970年代になって、衝撃的なレコードデビューを果たした人。この練習曲もその頃の一連の録音の一つで、白眉な成果。

 

その第一番。低音から高音まで細かな音符のスケールが鳴らされるが、その一つ一つの打鍵のごまかしのないクリアーな響きに世の多くのクラシック・ファンは度肝を抜かれたはず。続く11の曲も素晴らしい。あっという間に聴き終えていること請け合いです。

 

曲自体が素晴らしいので、一流のピアニストと言われている人であれば、誰の演奏を聴いても構わないようなものですが、貴方がまだこの曲を知らないなら、ポリーニで聴くべきです。

 

これが同じショパンでも感傷的な面が多分にある「前奏曲」になると話は少々違ってきて、誰の演奏を聴いても曲の魅力は伝わってきます。どこまで行っても「練習曲」は「練習曲」、たとえ第3番「別れの曲」に題名通りの感情を感じたとしても。ショパンは多分に甘い感傷的な面が目立ちますが、ここには彼の本来の男性的な一面が表された曲です。

 

まあ、世の中、特にクラシック通にはアマノジャクも多く、こういった素晴らしいピアニストに対し、感情に乏しいとかアンチの考えも持つ人がいたことも事実です。彼以上にアンチが多かった指揮者カラヤンも同じですが、

 

「テクニックは正義」

 

その完璧なテクニックを通して、初めて楽譜に込められたショパンの思いが伝わってくるような気がします。

 

この章終わり。