グローバル恐慌 | 新書野郎

グローバル恐慌

グローバル恐慌―金融暴走時代の果てに (岩波新書)グローバル恐慌―金融暴走時代の果てに (岩波新書)
浜 矩子

岩波書店 2009-01
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それがカラーなんだけど、岩波の金融危機ものは、金子勝とか本山美彦とか反米色が強いものばかりで、アメリカがその癌細胞だとしても、それを取り除けば、景気が戻るみたいな説にはどうも納得がいかなかった。その点、浜矩子は「欧州派」だから、米国の問題点を指摘しながらも、その先に連なるグローバルな視点で、ものが見えるので、分かりやすいことは分かりやすい。世界経済におけるアメリカの影響力の大きさを憂うより、これを機に地域化する「グローバル経済」を模索する方が、遥かに建設的ではある。政治や歴史を棚上げしてまで、「東アジア」が連携する必要性もこうした機会でもない限り感じさせられない。折りしも、政治面でも統合を果たさんとしているEUにも逆風が吹き、東アジアはEUをモデルにすることなく、通貨防衛面だけに専念することができた。日中が握る米国債をカードにすることもできるが、それも東アジアの基軸通貨争いが解決してからのこととなるだろう。いずれにしても、第二次ニクソン・ショックは米国がくしゃみをしても、他国が風邪をひかない程度に米国のプレゼンスが弱まらないと始まらない。中国の成長神話が米国に支えられている段階ではそれは難しかろう。
★★