ラテンアメリカ経済成長と広がる貧困格差 | 新書野郎

ラテンアメリカ経済成長と広がる貧困格差

ラテンアメリカ経済成長と広がる貧困格差 (創成社新書)ラテンアメリカ経済成長と広がる貧困格差 (創成社新書)
丸谷 雄一郎

創成社 2009-03-20
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創成社新書も結構コンスタントに出してくるな。ラ米は最初の「国際シリーズ」に入ってなかったが、企画自体は2006年に立てられていたのだとか。その間、BRICsだの、左派政権続出、そして金融危機と色んなことがあった訳だが、「経済成長と貧困格差」というキーワードは変わらなかったか。著者はメキシコシティ生まれという人だが、メキシコとの出会いは小学生の時、LAからメキシコ国境を越えてその貧しさを実感してからだという。マーケティングが専門らしいが、そうした縁で中南米経済もフィールドにしているとのこと。しかし、中心に書かれているのは「南米」の方で、ラ米経済の牽引車たるブラジルの記述が多い。とはいえ、アンティグアバーブーダとかまで無視することはなく、ちゃんと「ラテンアメリカ」の仲間に加えている。繋ぎのコラムは映画で統一しているが、コラム休憩を挟むのは新書では珍しい。生まれ故郷であるメキシコよりもブラジルに肩入れしている感じだが、メキシコはやはり「北米」経済圏という意識で控えめなのかもしれない。中南米で白人国と言えるのはアルゼンチンだけで、チリとコスタリカはその実、混血というのはその通りで笑ってしまった。まあアルゼンチンも実際は怪しいものだが、ウルグアイも含めて「白人」を標榜する国の方が生活水準高いのは事実だから、人種差別というより、経済格差の意味合いが強いのだろう。1950年代頃はまだアルゼンチンの方が西欧諸国より所得水準が高かったそうだ。その後ドンパチやら何だで低迷している間に西欧は無論、日本にもあっという間に追い抜かれその差は開く一方。メキシコがかろうじてOECDに入っているが、「中南米諸国」は30年来次の候補国になると見られながら、韓国、ポーランド、チェコといった新興国に先を越されてしまっている。BRICsでブラジルが台頭してきたのは正に30年来の悲願である訳だが、非西語の異端国家ブラジルを中心にまとまるのは難しい。むしろ政治的にはここの陰の主役は最貧国でありながら先進国であるキューバである。植民地の負の遺産は革命によってしか払拭できないのか。
★★