加油(ジャアヨウ)……! | 新書野郎

加油(ジャアヨウ)……!

加油(ジャアヨウ)……! 五輪の街から (朝日新書 136)加油(ジャアヨウ)……! 五輪の街から (朝日新書 136)
重松 清

朝日新聞出版 2008-10-10
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例によって、このベストセラー作家の作品は一冊も読んだことがないのだが(友だちが死んじゃう映画は最近観た)、これも中国本ということで読了。朝日の五輪リポーターみたいな形で中国に滞留していたらしい。朝日が2002年の時に起用した沢木耕太郎と同じ役割だと思うのだが、印象はかなり違う。重松は沢木の様にアスリートに自己投影できるタチではないので、その作品同様(と言っても読んでないのだが)とにかく市井の人にしか興味がない。この歳で痛風というのも怖いが、最後の方になると、もう飽きたからと観戦放棄する始末。朝日も別に観戦記を書かせようとした訳ではないのだろうが、試合内容とかに触れることは、ほとんどなく、観客の応援風景とかばかり。個々選手が全く無視されているのも五輪ものとしては異色だが、感動したとか、復活したとか沢木ばりに書かれるよりは、こっちに方がしっくるくる。主役は観客だから「加油(ジャアヨウ)……! 」なのだろうが、巷のブログなどみると、これを「チアユー」と読む年配の人が結構多いな。重松は専属記者も通訳も付いているから「ジャアヨウ」と聞こえたみたいだけど、「油」を「ユー」と読むのは上海かどっかかしら。近所の中華屋には「ユーリンジー定食」とかある。まあそんなことはどうでも良いのだが、結局、五輪にしても、その前のサッカーにしても、観客の態度を中国人一般と同一視するのは考え物ということか。連中が日本の試合とかでブーイングするのも、それが一生一大のハレの世界であるからで、観客文化というものが人気のサッカーとか卓球でもほとんど育っていないことには驚かされる。当然ながら、選手や競技を神聖なものとして捉えることはないので、サッカーも雑技団も大した違いはない。著者が愛すのは、こうしたナショナリズムから距離を置いた物見遊山の観客たちであるが、正にそこに自己投影をしているのだろう。気に入らないところは気に入らないと言い、美味いものは美味いと言う。日中関係といった大きな荷物を庶民が背負う必要は全くないのである。
★★