破天 | 新書野郎

破天

破天 (光文社新書)破天 (光文社新書)
山際素男

光文社 2008-10-17
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ちょうど山際素男さんが亡くなられたというニュースが入ってきたところなので、新書なのに600頁弱の二段組という量に二の足を踏んでいた佐々井秀嶺の評伝を一気読みしてしまった。かなりグロッキー気味である。去年は「チベット問題」も出したけど、両方とも再構成ものだったか。さすがに病身で、この量を書き下ろすのは無理であったろう。山際さん自身が仏教徒だったのかどうか分からぬが、成仏するに余りある仕事を仏教の為にしたのだと思う。この本は性格上、仏教の世俗的部分に焦点が当てられているのだが、そうした非神学性が宗教紛争に揺れる世界に対するアンチテーゼとなっている様な気がする。それこそが「破天」の意味するメッセージなであろう。佐々井秀嶺の俗物性を強調するのも実際本人がその様な人間であるということより、インド仏教徒の頂点に立つ日本人を偉人化したり、救世主化する物語とは一線を画したかったのではなかろうか。女性に対する妄想癖については、ガンジーに関しても著者は書いていたのだが、こういうものは「脱神格化」の手段なのかもしれない。秀嶺の女性遍歴については、あくまで自己申告の範疇かと思うが、そこに何がしかの意図が含まれているのか、単に本人にサービス精神があっただけなのか。秀嶺の俗物性はおおよそ日本の宗教家のイメージとは外れるものだが、日本人がインドに行ってインド人の改宗事業に勤しむという構図には違和感を禁じ得ない。それを可能としているのもインド人の宗教感であるが、インド人が宗教に寛容であると同時に不寛容であるということも言えるのだろう。この本も非宗教的な様で、其の実、宗教書の手法がとられていることが分かる。
★★