中国という世界 | 新書野郎

中国という世界

中国という世界―人・風土・近代 (岩波新書)中国という世界―人・風土・近代 (岩波新書)
竹内 実

岩波書店 2009-02
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去年、PHPから新書を出したのには驚いたが、古巣、岩波に戻ってまた新作新書。1923年生まれか。上の世代の中国畑の人たちは、あらかた毛沢東と魯迅に会いに逝ってしまったろうし、著者とて、自身が培ってきた「中国という世界」と現実中国の矛盾から解放される日はそう遠くないのかもしれない。そうしたことを意識してか、靖国は、オリンピックは、国家分裂は、未来はとチュウゴクに投げかけられる疑問にオトシマエを付けておこうというのが、この新書のコンセプトらしい。自分が理解している「中国」と日本人の概念としての「チュウゴク」は別物である意識がある様で、最近の現実中国は、この中国学の泰斗をもっても、「チュウゴク」としか思えない異世界なのかもしれない。そこで、著者のイメージにある「中国という世界」を引っ張り出してくる。それは現在の沸騰する経済、その前のパンダと人民服、それ以前の「新中国」といったイメージとは異なる戦前の支那学の視点がある様に感じた。「チュウゴク」とは、「現代中国」と区別する表記であると同時に、「中国」に変換しきれない「支那」の表象でもあるのだろう。山東育ちの著者が、南方に「中国」を見出すのも、北には「革命」の気運が感じられなかったことが所以となっている様だ。夷荻政権に抗する南の革命という著者が描く構図は、清朝のみならず、日本を夷荻に準えているのだろう。面白かったのは、最後に著者が今までのイキナリ罵られた体験を体験を書いていること。3つのうち2つは中国で、まあこれはよくある話なのだが、著者が若く、中国語も達者でなければ、イキナリ罵られるのが日常であったかもしれない。そして最後の一つが京都のサウナで日本人研究者に突然罵られたというもの。なんでも、著者の文革論調に影響されて文革礼賛をしてしまったが為に、後になって恨まれてしまったのだとか。京都のT教授って、誰か。まさか竹内好ではないだろうが、いずれにしても日本人離れした人だ。1960年に上海に行った話なども興味深いのだが、四川大地震で、市当局が見舞金を払おうとして親が拒否して暴動になったという見舞金の額が人民元六万元(一元=160円と換算して九六0万円)って何時の時代のレートだ。プラス三万八千元(六0八万円)の社会服務費だったら、計千五百万円ちょっとか。中国でそれだけ貰えるなら、親としても悪くはないんじゃないかな。先生はこれを少ないと理解した様だが、まさか日本円で143万くらいとは思いもしなかったろう。
★★