イギリス型<豊かさ>の真実 | 新書野郎

イギリス型<豊かさ>の真実

イギリス型<豊かさ>の真実 (講談社現代新書)イギリス型<豊かさ>の真実 (講談社現代新書)
林 信吾

講談社 2009-01-16
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林信吾の本なので、どうせまたイギリス礼賛、日本罵倒といったものかなと思ったら、そのパターンは前半だけであった。今回は医療と年金の問題に的を絞っているのだが、イギリスの無料医療制度を単純に賛美するだけでは異論が出ることを見越してか、中盤にはイギリス医療の問題点をかなり厳しく批判。ところがこれはどうもアリバイの様で、それでも、日本では年とったら医療費が大きくのしかかる、イギリスでは医療費がタダだ。だからイギリスの方が良いだろという結論になっている。とはいえ、日本にイギリス式の医療制度を導入したところで、日本の老人が安心して医療を受けられるというものでもなかろう。日本の老人の病院通いは一種の仕事みたいなもので、病気になったから医者にかかるというものとはまた違う。社会との接点として通院を続けている人も多いだろう。一体、イギリスの医療制度の下では、我が国の老人の何割が「病人」として認められるのだろうか。全く病気のない人間はそもそも存在しないので、医療は制度の問題というより、哲学的問題になってくるのかもしれない。
★★