アジア海賊版文化 | 新書野郎

アジア海賊版文化

アジア海賊版文化 (光文社新書)アジア海賊版文化 (光文社新書)
土佐昌樹

光文社 2008-12-16
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この著者は韓国が専門の人なのだが、「21世紀アジア学部」教授ということで、越境する「アジア文化」をテーマにした様だ。それでミャンマーへ視察旅行に出た訳だが、そこで実感する越境文化は海賊版と韓流。研究書と紀行文が混ざったものと位置づけているのだが、正にそんな感じの新書であった。その為、ミャンマー紀行と海賊版は連綿としているのだが、韓流は足りない部分を自分の専門出埋めたといったみたいで、期せずして、「アジア的混沌」を表した本になっている。著者は「アジア文化」においては「アメリカ化」が普遍なものとしているのだが、「海賊版文化」の説明に「公共圏」を用いる様に、学者にとっても欧米の理論が普遍なのである。自分たちの言葉で、自分たちの文化を説明できないのが「アジア」の限界なのかもしれない。韓流に関して冷めた見方をとっているのは、「韓国知識人」の影響である様だ。ミャンマーで韓ドラが視られているのをみて、やっと韓流を実感したのだという。同時期に私もミャンマーに行ってるのだが、閉店したレストランで従業員がみんなで韓ドラをみている光景をみて、韓流というか「アジアの原風景」みたいなものを感じた。こうした光景はちょっと前の中国でもみたし、昭和30年代の日本でもそんな光景があったのだろう。韓国専門にしては珍しく、親韓にもその裏返しとしての嫌韓にもぶれず、客観的に韓国を捉える人なのだが、嫌韓流の嚆矢が韓流に対する反感にあるというのは完全に間違いだろう。嫌韓流の嚆矢が日韓ワールドカップにあることは山野車輪も描いていることだが、日本トルコ戦でどっちを応援しようか迷った韓国人というのは、在日を除けば、本国では本当に特殊な例ではなかろうか。
★★