<満洲>の歴史
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この著者も色々と満洲ものを出してきたのだが、いよいよ決定版か。とはいえ、中公や岩波の歴史新書ではないので、地理的、民族的起源を詳細になぞらえることはなく、事件、出来事、文化に背景の説明に重きを置いた読み物として上質なもの。『<満洲>の歴史』であって「満洲史」ではないのは、講談社が「日本人のためのまったく新しい中国東北史」というキャッチ・フレーズを用意したことと関係があるのだろう。著者としては「満洲国史」を考えていたのかもしれないが、講談社の自主規制ではあるまいな。「偽満史観」に批判的なのは、研究者として当然のことだが、一方で中国側とも妥協を図らないと研究が進まないという事情は察せられる。その意味で日本においても、「満洲」評価が中国や政治の事情に左右され定まっていないことが、著者が「満洲」研究に打ち込む理由にもなっているのだろう。最終章で戦後の満洲評価の軌跡を取り上げているが、世論的には大きな影響を与えたと思われる草柳大蔵の『実録 満鉄調査部』は無視。著者の満鉄調査部研究はこの辺が一つのきっかけとなっているのだろうか。それにしても、高碕達之助が日比谷焼き打ち事件に関与していたとは知らなかったが、廖承志の親父の廖仲愷が参加した中国同盟会が東京で結成されたのはその15日前か。李香蘭、川島芳子、甘粕正彦、石原莞爾、溥儀と役者が揃っていることが、<満洲>を必要以上に劇画仕立てにしてまっているのかもしれない。そうした<満洲>アプローチも利用しつつ、経済面を中心にしたのは、それが著者の専門であるからと言うより、それが<満洲国>の本質であったということなのだろう。
★★★
