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ウィーン 

ウィーン―都市の近代 (岩波新書)ウィーン―都市の近代 (岩波新書)
田口 晃

岩波書店 2008-10
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「都市史」とでも言うのだろうか。ウィーンではローマ時代の遺跡も発掘されているそうだが、その記録は空白で、文献資料に現れるのは1137年になってからだという。その後栄華を極めるのがハプスブルグ家統治以降の「文化の都」としてであって、その評価は現在に至るまで変わっていないのだが、「ヨーロッパ政治史」が専門の著者は市政に焦点を当て、「文化」代表はモーツァルト、ベートーベンではなくフロイトである。副題が「都市の近代」であるからにして、ヒトラーの登場で幕となるのだが、ヒトラーがオーストラリア出身であって、ドイツ系が多数派となったウィーン市民に併合を容認する気運があったとはいえ、外国勢力のウィーン支配という現実は市政の終焉を意味するものなのだろう。カトリック勢力と社会民主主義勢力が対峙している状況というのは現在でも変わらない構図なのかもしれないが、フロイトらが支持した社会民主勢力は「赤いウィーン」と呼ばれる急進的な施政を展開していたことがあるらしい。先日、事故死したハイダーの支持はウィーンではどうだったのかは知らぬが、首都というのは元来、リベラルなものなのだろう。石原がリベラルというのは逆説的であるが、都民が求めたのは「リベラル」の名の下に何もしない都政ではなく、施策を持った都政である。著者があとがきで触れているウィーン市民のクライスキーに対する二面的評価も、石原の評価と似ているところがあるのだろうが、青島、石原という流れや橋下なんてのはイデオロギーとか階級に支配された「二つの陣営」政治が日本の大都市では崩れ去ったということか。
★★