新しい中国人  | 新書野郎

新しい中国人 

新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書 86)新しい中国人 ネットで団結する若者たち (ソフトバンク新書 86)
山谷 剛史

ソフトバンククリエイティブ 2008-09-17
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著者は中国IT専門のライターらしい。「中国通」も専門分野がないと単なる居酒屋談義に終わってしまうものだが、その意味では現実に近い事情説明であると感じた。ゲームやインターネットを身近に育った世代であるから、チャーズのオバサンの様な憶測に頼った分析ではなく、仮想空間の中国人を皮膚感覚で捉えることができるのだろう。逆に、リアル中国人との付き合いが長い人はバーチャルな中国人と現実の中国人の間に生じる矛盾を理解することができずに、自分がよく知っている(と思っている)中国人の公式に当てはめるしかない。反日を叫ぶ中国人が日本製品や日本のアニメが大好きなことは別に不可思議でもなんでもない。日本の「ネット右翼」もラーメンやキムチを拒否している訳ではなかろうし、留学生などとは親しく接しているのではなかろうか。急速に「反日風」が衰えたのも、政府が「反日」を是としなくなったからで、改革開放で日本ブームが起きた時がそうであった様に、「公式見解」に沿う形で、「世論」が形成されるというのが中国である。日本の事情など知らない中国人は、日本もそういう国だと思っているので、日本の「親中派」を極右独裁政権下の反体制勢力として応援しているのであろう。それは、日本のフリチベ勢力と同質の「正義感」でもあるのだが、「日本」のチャンネルが多角化したのも、そうした「日本」に興味津々の連中の功績であるとも言えよう。日本側では特にAV女優の貢献度が高いのも、香港の例に準じたものであるから当然かと思われるが、オタク化したコアな日本マニアが登場しているのも順当な話である。中国のネット利用者は高額所得者という俗説が間違っていることは、私も感じていたことなのだが、先日観た「黄牛田」の映画でも、ホームレスのペットボトル拾いが、ネットカフェに通うシーンがあった。中国の少なからずのネット人口は日本の「ネットカフェ難民」と同様に格差社会の犠牲者によって支えれているのだろう。若者にとってネットカフェは一番、カネのかからない娯楽である。「新しい中国人」は、かつての「新中国人」の様な単一化されたものではない。「ネットで団結する若者たち」にそう目くじらを立てる必要はないだろう。
★★★