ドット・コム・ラヴァーズ | 新書野郎

ドット・コム・ラヴァーズ

ドット・コム・ラヴァーズ―ネットで出会うアメリカの女と男 (中公新書 (1954))ドット・コム・ラヴァーズ―ネットで出会うアメリカの女と男 (中公新書 (1954))
吉原 真里

中央公論新社 2008-06
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この著者の前の新書も読んでるのだが、今回はこりゃまた随分と違うものを持ってきた。正に体当たり取材というか体験記なのだが、NYにサバティカルに出たのは、これが目的ではなく、別の研究テーマもあったらしい。フランスでもバカンス前に、一緒に過ごすパートナーを見つけなくてはならないものらしいが、あちらのサバティカルというものも一人で過ごすものではないのかもしれない。トニ・モリソンも知らなければ、左も右も嫌いな「反動」の私は最初から失格なのだが、日本の出会い系とは全く違う世界がアメリカでは常識となっているのか。それにしても、よくこんな短期間で何人もホイホイ付き合えるものかとも思うのだが、その辺は著者の気持ちが若いからなのか、オトナなのかよく分からんところだ。とはいえ、ちゃんとセックスのことも書いているし、フィールドワークとしてはかなり面白いものであることはたしか。どうも女性のコイバナは美化とドロドロが多くて、正直苦手なのだが、こういう「カジュアル」な話だと興味深いものがある。もっとも、著者もそうした美化とドロドロがホンモノの恋だと思っているフシがあって、テーマから外れるからという理由もあるが、「ホンモノ」の方を匂わせているのも、何か「女の意地」みたいなものを感じる。「オリエンタリスト」への抵抗感もそうした文脈で捉えてよいかと思うが、白人の「アジア系女性」に対する偏見と憧憬は、日本以上に「女性性」というものを意識させられるのではなかろうか。著者が驚くべき成果を達成したことからも分かる様に、「アジア系女性」の選択肢は、「アジア系男性」の何百倍もあると言っても過言ではなかろうが、アメリカの様な国でこうしたシステムが正常に稼動しているのも意外だ。もちろん犯罪と結び付くケースは少なくないだろうが、実社会とは逆に、ネット社会が低信頼性社会ではないというというのは日本と全く逆である。少なくともアメリカではネットというものにネガティブなイメージはないのだろう。考えてみれば、ネットというのはアメリカが作り出した自国の伝統文化には違いない。核兵器とか宗教への信頼もそうだが、ネットを批判するのは自国を批判する様なものなのだろうか。
★★★