人民解放軍は何を考えているのか | 新書野郎

人民解放軍は何を考えているのか

人民解放軍は何を考えているのか (光文社新書 364) (光文社新書 364)人民解放軍は何を考えているのか (光文社新書 364) (光文社新書 364)
本田善彦

光文社 2008-08-12
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元「自由中国之声」アナウンサーという台湾在住の著者はこれで三冊めの著書か。2年ごとにメジャーから出しているのだけど、前2冊はかなり良かったので、今回も2年間の取材成果かと思いきや、趣味の中国軍事ドラマをDVDで観た成果なのだという。しかも既出ものらしいのだが、それが、「軍事研究別冊ワールドインテリジェンス」と「世界」に発表したものを合わせたというから、何か水と油みたいな組み合わせだ。ということで、軍事ドラマ関連は前者で、後者は例のドキュメンタリー「大国崛起」を分析したもの。前者は3本を集中的に取り上げているのだが、粗筋を延々と綴る必要はないのではないかと感じた。ただ、相変わらず、この著者の論考は的を射ているものが多い。中国の「大国意識」と「弱者意識」の二面性などは、それを上手く利用してきた政府が人民に、しっぺ返しを食らい、新たな舵取りをしないと制御不能になってきていることを感じる。「大国崛起」の放映などは、その新方針を表すものなのだろう。今後も、都合のよい時に限っては、「第三世界」の旗印を下ろす事はないかと思うが、前々から叫ばれている「軍の近代化」に「弱者意識」はむしろ障害となるものであろう。軍事ドラマの題材も「抗日戦争」から、この本で紹介している様な「現代の戦争」に移るのかもしれない。とはいえ、ハリウッドに幾らでも戦争映画の題材があるのと違い、自衛隊同様、人民解放軍ドラマは、その点、「戦争」はフィクションに置き換えなくてはならいので、「チベット」も歪な形で登場している様だ。著者は「東トルキスタン」がチベットの様に欧米の支持を得られないのはそれが「イスラム教」だからとしているのだが、「トルコ」との結びつきもある様に感じる。台湾に住んでいれば、たしかに「人民解放軍」の侵攻というのは現実的に思えるのだろう。日本が中国の省になるという極論が出ていることを批判しているのも、「平和ボケ」の文脈においての批判であろう。むしろ日本には中国に占領されたら、自分たちも堂々と「抗中運動」できるのにという願望が底にある様にも感じる。自分が生まれいない時代の歴史のことで、相手が勝手に「道徳的優越感」を持っているのは、たしかに不公平なことである。
★★★