ホロコースト
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日本のナチス研究の第一人者である著者のホロコースト解説。必然的にナチスの側、所謂「殺す側の論理」に焦点を置いたものなので、ユダヤ系の息のかかった悲劇話とは異なる。計画的か偶発的か、ヒトラーによる命令があったのかといった論争の動きなども紹介。このテーマはそれこそ地球人類学的学問になるのだが、その「殺される側の論理」自体は聖域化されるものの、数字や「殺す側の論理」については事実究明の動きがなおも続いているらしい。悲劇の再発を防ぐにあたって「殺される側の論理」を切実に訴えることより、「殺す側の論理」を究明することの方が有効ではないかという気もする。「アウシュビッツ」が象徴化されたことにより、「強制収容所」と「絶滅収容所」が混同されたが、実際は収容者数も死亡者数も「絶滅収容所」より「強制収容所」の方が多かったらしい。これを以ても、ホロコーストは副次的なもので、戦争の影が狂気を引き起こしたということが言えるのではなかろうか。となると、ホロコーストの原因は人種主義というよりも、戦争ということになってしまうのだが、この両者が不可分の関係であることは過去に行われた戦争における「敵に対する眼差し」を振りかえってみれば分かることである。つまるところ原因が戦争で、理由が人種主義なのであろう。
★★
