見習いドクター、患者に学ぶ  | 新書野郎

見習いドクター、患者に学ぶ 

見習いドクター、患者に学ぶ―ロンドン医学校の日々 (集英社新書 431I) (集英社新書 431I)見習いドクター、患者に学ぶ―ロンドン医学校の日々 (集英社新書 431I) (集英社新書 431I)
林 大地

集英社 2008-02-15
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ロンドンの医学校で医師免許をとった人の体験記なのだが、幼少期もケンブリッジで過ごしたという。育ちのよさそうな感じもしたので、どっかの有名教授の息子だなとピンと来たのだが、林望の息子だった。林信吾の息子という線はさすがになかったか。集英社新書は父親が出した翌月の出版だそうだが、イラストで参加しているのは娘かな。ということで、英語には不自由ない家族の様だが、最初に「アレキサンダー」と教授に命名されるところから始る。これを英国式同化策に屈したと読者が想定するのを見越しているのか、その命名は自分から頼んだもので、ファーストネームの「ダイチ」は「死」に通じるので、病院では不適切だし、患者さんからも覚えられる名前をつけるのが医師としての務めであるという説明が続く。最近のヨーロッパでは、自国名を外国人に押し付ける様なことは、あまり流行らないだろうし、むしろ「エスニック名」の方がクールに思われるだろう。まあ「通名」の99%は自らの意思で使っているもので、それを差別の象徴などとするのは本末転倒の話であることは日本においても変わりはない。そんな「アイデンティティ」の模索から始る話は、医師免許取得後に帰国して、日本で医師となることを選択するところで終わるのだが、そこに葛藤がある訳でもなく、スマートなもんである。ほぼネイティブの語学力と、医学生としてのステータスは、「東洋系」が英国社会で生きる上で、ハンデを意識させないものなのであろう。もっとも、あちらでは「医療」が一番、エスニック化が進んでる業界とも言われるから、あえて、そうした居心地の良さを避けて、システムも価値観も違う日本で勝負しようと思ったのだろうか。親父の「後を継ぐ」為か、医学部進学がならなかったのか、どうか知らぬが、最初は慶應の文学部に進んだそうだ。「医学部」が先なのか、「英国留学」が先かもわからない。とにかく上品な話ばかりで、そんな野暮なことは「ドクター」が話す必要もないか。