ユダヤ人 最後の楽園
![]() | ユダヤ人 最後の楽園――ワイマール共和国の光と影 (講談社現代新書 1937) (講談社現代新書 1937) 大澤 武男 講談社 2008-04-18 売り上げランキング : 49613 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者の専攻はドイツ・ユダヤ人史で、現在、フランクフルト日本人国際学校理事という人らしい。ということで、ユダヤ人の「楽園」とは、ワイマール共和国のことであり、「最後の」になったのは、やがてナチスが政権に就くことになったからである。イスラエルが今も昔も「楽園」ではあり得ないのは言うまでもないが、副題が示している通り、ワイマール共和国にも「光と影」があって、ユダヤ人が「楽園」をみたとするのは、あくまで後のホロコーストとの対比による、歴史の後付けみたいなものである。それはドイツ国民というカテゴリーの中において、到達できる「楽園」であった訳だが、この時期に「愛国者」となり、国籍を取得し、従軍し、改名し、改宗したユダヤ人が多かったことを歴史は記録している。その意味では、大日本帝国のエスニック・グループと同じ構図であるのだが、日本はその後の歴史の「残虐さ」が足りなかったため、その構図を「楽園」と評することができないということになる。実際にドイツ人やユダヤ人がその「楽園」をどう評価しているのかは分からないが、ドイツはユダヤ人に対して謝罪ではなく、称賛する方向に進んでいるという。ユダヤ人のドイツ文化に対する貢献は、それを抜きにしては語れない粋に達しているから、ただ謝罪するだけの関係よりは生産的であることはたしかだろう。著者が日本にはその努力が足りないというのは、そうした文脈で「近隣諸国」と対処しろということだろうが、これはまた別次元の話であろう。それにしても、この新書は入門書としてはよく出来ている。内田センセの新書も、まあ良かったが、被害者と加害者という二項対立によらない独猶関係というのは世界史的にも知っておく事柄であろう。アインシュタインがイスラエルの初代大統領に推されていたとは知らなかったが、ナチス政権初期に、ユダヤ人団体も国民統合の動きに加わっていたとは興味深い。
★★★
